貨車車票

貨車車票と貨車表示票：鉄道貨物輸送の証

貨車車票とは、鉄道貨車の両側面に掲示され、貨物の行き先、内容、荷受人などの情報を示す重要な紙片です。略して「車票」と呼ばれることも多く、発駅で作成され、輸送中や到着駅での貨物仕分け、引き渡しに利用されます。車票は、貨車の側面に設けられた専用の枠（車票サシ）に挿入されます。

特殊な貨物（放射性物質や危険物など）の場合は、車票に加えて貨車表示票も使用されます。これは、貨物の危険性を示すための表示で、車票サシの近くに設けられた表示票サシに挿入されます。発駅では駅長が貨物の積み付け状況を確認後、車票と表示票を挿入し、到着駅では貨物取り卸し後に取り外します。

近年では、車票は鉄道ファンによる収集対象となり、イベントでの販売やインターネットオークションでの取引も行われています。一方で、輸送中の貨車から車票が盗まれる事件も発生しており、問題となっています。なお、中国語の「車票」は乗車券を意味することに注意が必要です。

JR貨物における車票と表示票

JR貨物の車票はボール紙製で、幅252mm、高さ205mmのサイズです。白地に黒色の文字と罫線が印刷され、種類によっては赤色や緑色の線も含まれます。

車票の種類と記載事項

JR貨物では、積み荷に応じて3種類の車票が使用されます。

1. 普通車票: 危険品や電算処理車票を使用しない場合に用いられます。
2. 危険品車票: 赤色の逆T字状の太線が印刷されており、危険品のみを積載した貨車に使用されます。
3. 電算処理車票: 緑色のL字状の太線が印刷され、本社運輸技術部長が指定した列車に連結する貨車に使用されます。

3種類の車票は、色付き線の有無を除き様式は同一で、以下の情報が記入されます。

発駅、発駅コード: 貨物の出発駅とそのコード。2駅発の場合は第1発駅を記入します。
着駅、着駅コード: 貨物の到着駅とそのコード。積み替え輸送の場合は積み替え駅と到着駅を記入します。複数駅への輸送、途中での荷卸し、検査・秤量なども記載方法が細かく規定されています。
貨車記号番号: 貨車の識別番号。
月日: 貨物運送状の日付か、貨車仕立ての日付。
品名: 積み荷の品名。危険物、標準荷造包装、毒物、劇物などは特別な表示がされます。
取卸線: 着駅での取扱線。専用線などが必要な場合に記入されます。
封印環記号番号: 使用した封印環の番号。
重量: 貨物の重量（トン単位）。
荷受人: 貨物を受け取る人。在日米軍の場合は特別な表示がされます。
記事: 引渡注意、封印省略、検査状況、付添人、開戸状況、荷受梁の保管場所、貨物個数、貨物分類記号、シート・ロープ送状情報、運賃着払い、回送状況、検査・訂正・再作成などの状況を記載します。
* その他: 本社運輸技術部長や支社長が必要と認めた場合に記載される事項

さらに、重量換算、軽量換算、重量超過などの場合にも、車票に特別な表示がされます。私有貨車や貸付貨車の空車返送には、使用済みの車票の裏面を使用することもできます。

貨車表示票の種類

JR貨物の貨車表示票は、ボール紙製で幅145mm、高さ225mmです。以下の5種類があります。

1. 放射性物質表示票: 白地に赤色印刷。放射性物質積載貨車用。
2. 火薬表示票: 白地に赤色印刷。火薬類積載貨車用。
3. 連結注意表示票: 白地に赤色印刷。特定の危険物積載貨車、特大貨物、甲種の鉄道車両輸送時に使用されます。ハンプでの扱いには注意が必要です。
4. 危険品表示票: 白地に赤色印刷。危険品車票使用時に、連結注意表示票を使用しない場合に使用されます。
5. 列車指定表示票: 白地に緑色印刷。列車を指定する場合に使用されます。

表示票には、「区間」と「日付及び列車」の欄があり、貨物取扱駅コードと日付・列車番号を記入します。

歴史

貨車表示票は1931年から使用開始され、当初は10種類ありました。それ以前は、注意事項は簡単な紙片で対応していました。1958年頃には、国鉄で複数の車票と表示票が使用されていましたが、1973年には種類が整理統合され、様式も縦書きから横書きに変更されました。

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