貸しボート十三号

貸しボート十三号

『貸しボート十三号』は、横溝正史による中編推理小説であり、同名の小説集にも収録されています。この作品は「金田一耕助シリーズ」に含まれ、1957年に『別冊週刊朝日』に発表、翌年中編作品として書籍化されました。また、2020年には本作を基にしたテレビドラマが放送され、大きな話題となりました。

あらすじ

物語は、日曜日に隅田川の浜離宮公園沖で発見された貸しボートからスタートします。このボートには、男女の遺体が乗っており、両者ともに頭部がノコギリで切断されかけているという衝撃的な状態でした。女性は派手なスーツを着ており、心臓部分には刃物による傷があり、死因は絞殺とされます。一方で、男性はパンツ一丁の状態で、こちらも心臓に刺し傷があるものの、ひもで首を絞められていたことが判明。

金田一耕助は、等々力警部と共に現場を調査します。事件の背景には、身元を隠すための計画があったと考えられ、金田一はこの後の捜査に乗り出します。現場のボート屋の店員の証言により、金曜日の夜に借りたボートの客が、金縁眼鏡を着用し、整った髭を持つ中年の紳士であることが判明します。

調査と展開

月曜日に、大木健造という男が出頭します。彼は、殺害されたのが妻の藤子と、その娘の家庭教師である駿河譲治であることを自供します。大木は不倫の噂があると否定しますが、警察は彼を疑い始めます。しかし、ボート屋の証言では、大木とは異なる外見の男が確認されています。

金田一は、事件がX大学ボート部のボートハウスで起きた可能性が高いと判断し、その場所を調査。ボートハウスは清掃されており、証拠が残っていないことがわかります。金田一は、ボートをスムーズに扱える実力が要求されるため、容疑者たちの中に有力な人物がいると考えるのです。

調査が進むにつれ、X大学のボート部員たちとの面談が行われます。初めは警戒心を持っていた彼らも、金田一の存在を知って態度を変え、駿河との関係について証言を始めます。駿河は、専務の娘である川崎美穂子の婚約者であり、その関係が事件と深く絡んでいることが明らかに。

さらに、事件の夜に不審な行動をとっていたボート部の仲間たちも登場し、彼らの証言もまた事件の核心に迫る要素となります。金田一はこれらの情報を集約し、遂に事件の真相に辿り着くことを決意します。

テレビドラマ

本作は2020年にNHK BSプレミアムで放送された短編ドラマにて再現され、原作に忠実な構成が評価されました。しかし、登場人物たちの設定や舞台装置には現代的なアレンジが施され、制作側の意図が見られました。

結論

『貸しボート十三号』は、横溝正史の独特な推理の冴えを感じられる作品です。男女の凄惨な殺害事件を通じて、人間関係の複雑さや権力の影響が浮き彫りになります。金田一耕助が真相を解き明かすことで、読み手は一層の充実感を得られることでしょう。

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