貿易風にさらされて/マリン・ブルー

マザー・グースのラストシングル「貿易風にさらされて／マリン・ブルー」：山下達郎プロデュースによる再レコーディングと秘話

1977年11月20日、マザー・グースの4作目にして最後のシングル「貿易風にさらされて／マリン・ブルー」が発売されました。このシングルは、彼女たちのキャリアにおいて重要な位置を占める作品であり、数々の興味深いエピソードが隠されています。

このシングルの最大の特徴は、当時既に高い評価を得ていた山下達郎が編曲とプロデュースを手掛けた点です。A面「貿易風にさらされて」は、マザー・グースのファーストアルバム『インディアン・サマー』に収録されていた楽曲で、B面「マリン・ブルー」はセカンドアルバム『パノラマ・ハウス』からの選曲。しかし、このシングルでは両曲とも山下達郎による再レコーディングが施されており、オリジナルとは異なる魅力が加えられています。

山下達郎がマザー・グースのプロデュースを引き受けたきっかけは、彼の出版マネージメントを担当していた京極謙氏が彼にマザー・グースのアルバムを聴かせたことでした。山下達郎は、プロデュースを依頼される前に、新宿ルイードでのマザー・グースのライブをこっそりと観覧していたというエピソードも残っています。実はマザー・グースのメンバーである京田由美子は、アマチュア時代にシュガー・ベイブのアルバム『SONGS』に強い影響を受けており、ライブ会場で山下達郎の存在に気づいた彼女は、驚きと興奮を隠せないほど舞い上がったそうです。

山下達郎にとって初のプロデュース作品となったこのシングルは、多くのオリジナルレパートリーの中から「貿易風にさらされて」と「マリン・ブルー」の2曲が厳選されました。レコーディング後、マザー・グースは尾崎亜美のルイード公演へのゲスト出演やFM番組への出演など、1978年初頭まで精力的にプロモーション活動を行いました。しかし、その後まもなくグループは解散を迎えることとなりました。

「貿易風にさらされて／マリン・ブルー」は、アナログシングル盤が廃盤となった後、長らく聴くことが困難な状態が続いていました。しかし、2005年には『インディアン・サマー』と『パノラマ・ハウス』の2タイトルが紙ジャケット仕様でCD化され、このシングル2曲がボーナス・トラックとして収録されることで再び日の目を見ることとなります。さらに、2013年にはディスクユニオンの「昭和歌謡ジュークボックス」シリーズの一環として、400枚限定で7インチ・シングル盤が再発され、多くのファンを喜ばせました。

シングルジャケットは、メンバーの写真に加え、キャッチコピーが記されています。裏面には歌詞に加えて、両曲の楽譜と『インディアン・サマー』、『パノラマ・ハウス』のアルバム紹介が掲載され、楽曲だけでなくアルバム全体への理解を深めるための工夫が凝らされています。

「貿易風にさらされて／マリン・ブルー」は、マザー・グースの音楽性と、山下達郎のプロデュース能力が融合した貴重な作品です。彼女たちの短いながらも輝かしいキャリアの最後を飾るにふさわしい、そして、今もなお多くのリスナーを魅了し続ける名曲と言えるでしょう。このシングルは、マザー・グースの歴史、そして日本の音楽史において重要な1枚として、これからも語り継がれていくことでしょう。

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