赤い薔薇ソースの伝説

『赤い薔薇ソースの伝説』



『赤い薔薇ソースの伝説』(原題:Como agua para chocolate、英題:Like Water for Chocolate)は、1992年に製作されたメキシコマジックリアリズム映画です。アルフォンソ・アラウが監督を務め、メキシコの作家ラウラ・エスキヴェルのデビュー小説を原作としています。この作品は、その独特の世界観と感動的なストーリーで国内外から高い評価を受けました。1993年度の第65回アリエル賞(メキシコ・アカデミー賞)では、主要な作品賞を含む全11部門を制覇する快挙を達成。主演のルミ・カヴァソスは東京国際映画祭で主演女優賞を受賞し、英国アカデミー賞外国語作品賞にもノミネートされるなど国際的な注目を集めました。公開当時、アメリカで最も高い興行収入を記録したスペイン語映画としても知られています。

タイトルに込められた意味



英語版タイトル「Like Water for Chocolate」は、スペイン語の原題「Como agua para chocolate」を直訳したものですが、これは原作者エスキヴェルにインスピレーションを与えたメキシコの慣用句に由来します。熱湯にチョコレートを入れて溶かす様子から転じ、強い情熱や激怒、時には性的な興奮状態を表す慣用句として用いられます。本作が、主人公ティタの抑えきれない感情や情熱を核としていることを考えると、このタイトルは作品の内容を見事に示唆していると言えるでしょう。

物語



物語の舞台は、メキシコのとある家庭。主人公のティタは、家を継ぐ末娘として結婚を禁じられる厳しいしきたりに縛られています。彼女が心惹かれた青年ペドロは、ティタに結婚を申し込みますが、母親のエレナは掟を盾にこれを拒絶。代わりにエレナは、ティタの姉ロサウラをペドロに勧めます。ティタのそばにいたいペドロはこの提案を受け入れ、ロサウラと結婚することを決めます。

ティタは苦しい心境の中、姉とペドロの結婚式のウエディングケーキを焼きますが、そのケーキを食べた人々はティタの悲しみが乗り移ったかのように嘔吐し、涙を流します。これが本作を特徴づけるマジックリアリズムの始まりです。1年が経ち、ペドロから贈られた薔薇に心を揺さぶられたティタは、その花びらをソースにしたウズラ料理にペドロへの想いを込め調理します。この料理を食べた姉ガートルーディスにはティタの熱情が伝染し、熱を冷ますため浴びたシャワーは情熱で燃え上がり、裸で逃げ出したガートルーディスは、香りにつけられた革命兵士に連れ去られます。

ロサウラは男の子を出産しますが、ペドロの視線は授乳するティタに注がれています。エレナはティタに疑いの目を向け、ロサウラとペドロを遠方に引っ越させます。しばらくして男の子が亡くなったことを知ったティタは、エレナを責め、精神錯乱に陥り鳩小屋に閉じこもります。友人ジョン・ブラウン医師はティタをテキサス州に連れて行き、治療を行います。ブラウン医師の祖母が語った「心の中のマッチ」の話は、ティタの心を癒やします。

回復したティタはブラウン医師と良い関係を築き、彼の求婚を受け入れます。しかし、エレナが革命家に殺害され、葬儀のためにロサウラとペドロが帰郷。ロサウラは第二子エスペランサを出産します。ブラウン医師が自宅に戻ると、ペドロとティタは互いへの情熱に身を委ね、夜を共にします。ティタの元にはエレナの亡霊が現れますが、ガートルーディスが夫と共に帰郷した夜、ティタはエレナの亡霊を追い払います。ティタの妊娠は想像妊娠だったと判明。ブラウン医師に婚約辞退を申し出ます。

それから20年後、アレックス(ブラウン医師の先妻の息子)とエスペランサの結婚式の日。ロサウラはすでに亡くなっていました。ペドロはティタに、変わらず愛しており結婚したいと伝えます。二人は激しく愛し合いますが、体内の心のマッチ全てに火が灯り、情熱があまりに急速に燃え上がったためペドロは腹上死します。ペドロを失ったティタは、二人の思い出を噛み締めながら実際にマッチを飲み込むと、体から火花が走り小屋全体が炎上します。残されたのは、ティタのレシピブックだけでした。

主要キャスト



  • - ティタ:ルミ・カヴァソス
  • - ペドロ:マルコ・レオナルディ
  • - エレナ(ティタの母):レヒーナ・トルネ
  • - ドクター・ジョン・ブラウン:マリオ・イヴァン・マルティネス

本作は、「ヌエーヴォ・シネ・メヒカーノ」(新しいメキシコ映画)における重要な作品の一つです。

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