赤リン発煙弾

赤リン発煙弾について

赤リン発煙弾（せきりんはつえんだん）は、特定の砲弾のタイプで、主に赤リンの燃焼を利用して煙幕を生成するために設計されています。英名は Red Phosphorus に由来し、RP発煙弾とも呼ばれることがあります。

歴史

赤リンが煙幕として利用できる特性は、第一次世界大戦の時期から知られており、日本でも昭和初期から研究が進められてきました。赤リン自体は高い安定性を持ち、常温の空気下では自発的に燃焼することはありません。しかし、1995年にBAEシステムズにより実用化されました。この発煙弾は、高エネルギーバインダーによって赤リンの被覆が施され、煙幕生成が可能になりました。現在では、赤外線センサーに対する優れた遮蔽能力から、白リン弾の次世代型としての置き換えが進められています。

構造

赤リン発煙弾の外観は通常の砲弾とほとんど変わりありませんが、若干長いタイプもあります。弾殻と弾底部はそれぞれ別部品で構成されており、相互に圧入または接合されています。信管は弾頭または弾底に設けられ、内部では赤リンが、燃焼速度の高い火薬から成る火管を貫通しています。弾頭部や弾底部には、反応生成ガス量の多い放出薬が搭載されています。

信管が作動すると、火管が燃焼を開始し、赤リンに引火します。この反応により、放出薬に点火され、大量のガスが発生します。発生したガスは弾内圧を高め、弾殻と弾底部が分裂しながら赤リンのペレットが放出されます。放出されたペレットは、その酸化剤と高エネルギーバインダにより燃焼し、五酸化二リンを生成。この物質は大気中の水蒸気を吸収し、白色の煙霧を形成し、可視光から赤外線まで幅広い光線を遮断する効果があります。

この過程で発生する温度は2700度を超えることもありますが、すぐに冷却されます。また、焼夷弾ではないものの、可燃物が落下地点にあれば着火の可能性も存在します。光を発しますが、明るさは限定的で、昼間でも速やかに煙に変わりますので、照明弾としての機能は望めません。433弾機関や迫撃砲によって広く使用されており、81mmの迫撃砲弾の場合、150メートルの高度で炸裂し、最大5375平方メートルを煙幕で覆うことが可能です。

組成

赤リン発煙弾の組成は以下の通りです。

• - 赤リン：55〜75％
• - 酸化剤：5〜30％
• - 金属粉：5〜10％
• - 高エネルギーバインダ：5〜20％
• - グリシジルアジドポリマー
• - 3,3-ビス（アジドメチル）メチルオキセタン
• - 3-アジドメチル-3-メチルオキセタン

安全性と規制

赤リンの単体ではなく、酸化剤と高エネルギーバインダと混合されており、完全に反応して五酸化二リンに変わるため、赤リンの塊が残存することはありません。赤リン発煙弾は化学兵器禁止条約で規制されておらず、内蔵された炸薬は爆発しても殺傷能力を持つ破片を飛散させることはありません。しかし、空中で炸裂すると、砲弾の破片が降ってくる危険があります。現行では、複動作式の信管が使用されているため、不発弾の発生率は低下しています。

まとめ

赤リン発煙弾は、戦術的に重要な煙幕を生成するための有用な装置であり、効果的に兵器システムに組み込まれています。その特性や構造の理解は、現代の戦術的運用に役立つでしょう。

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