赤字国債

赤字国債（あかじこくさい）

赤字国債とは、日本が財政の赤字を補填する目的で特例として発行する国債のことです。この制度は、予算が赤字である場合に、その不足分を賄うために設けられています。日本の財政において、国債の発行は一般的に禁止されている中で、一定の状況下においてのみ認められる特異な位置づけがされています。

概要

日本の財政法第4条には「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない」と規定されており、これにより国債の発行は原則禁止されています。しかし、この条文の但し書きにより、公共事業のための資金調達は国会の承認を得ることで可能となります。この例外規定に基づき、建設国債の発行が認められていますが、赤字国債の制度がスタートした背景にあるのは、特例公債法の制定です。

1965年度の補正予算において、赤字国債の発行が1年限りで認められ、戦後初めてその発行が行われました。1975年度以降は、1990年度から1993年度を除いて、赤字国債の発行が毎年恒常的に行われています。特に、小泉政権下の2004年度には国債発行額がピークに達し、2007年度には一時的に減少したものの、2008年度には世界的な金融危機の影響で大規模な増刷が行われました。

2015年度には新規の国債発行額が40兆円を下回るなど、一時的な安定を見せたものの、2020年度には新型コロナウイルス対策のため、発行額が90兆円に達するという事態になりました。このように、赤字国債は予期せぬ経済的な混乱や危機に対して、財政政策を迅速に調整する手段として利用されています。

建設国債との違い

赤字国債と建設国債には重要な違いがあります。建設国債は具体的な資産、すなわち公共事業に関連するインフラや施設の整備を目的として発行されるため、その発行によって生み出される資産が未来の収入につながる可能性があります。一方、赤字国債は財政の赤字を直接的に補うためのものであり、見合い資産が存在しないため、長期にわたる国の財政に対する影響が大きいと言えます。このため、大和総研は「不況時に増税が現実的ではないため赤字国債も一定の役割を持つべきである」としつつも、見合い資産の欠如によりその取り扱いには注意が必要と指摘しています。

まとめ

赤字国債は日本の財政において重要な役割を果たしていますが、その発行の背景には慎重な意義があり、持続可能な経済政策にとって不可欠な側面でもあることを理解しておく必要があります。今後も、経済情勢や財政政策の変化に応じて、この制度の運用がどのように変わっていくのか注視する必要があります。

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