赤羽村 (群馬県)

赤羽村（あかばねむら）

かつて群馬県の南東部、邑楽郡に存在した赤羽村は、日本の地方行政区画として一定の期間、その名を記された村です。この地域は、その地理的特徴として村内を谷田川が流れ、水辺に恵まれた土地柄でした。赤羽村の歩みは、近代的な地方自治制度が本格的に運用され始めた明治時代に端を発します。

村が誕生したのは、明治22年（1889年）4月1日のことでした。この時期、全国的に市町村の再編が行われ、それまでの古い村の区域が整理統合されました。赤羽村もこの動きの中で、赤生田村と羽附村という、それまで独立していた二つの村が合わさることで新たに設立された自治体です。この合併により、行政運営の効率化や地域共同体の強化が図られました。

赤羽村は、成立から約65年間にわたり、邑楽郡の一員としてその存在を保ちました。この間、村の人々は農業を中心に生計を立て、地域の社会基盤を整備しながら静かに歴史を重ねていきました。しかし、第二次世界大戦後の日本において、地方行政のあり方が見直され、市町村の合併が全国的な潮流となります。これは、増大する行政需要への対応や、より広範囲な都市計画などを推進するための動きでした。

昭和29年（1954年）4月1日、赤羽村は、その歴史的役割を終えることになります。この日、赤羽村は周辺の他の自治体と連携し、大規模な合併に参加しました。具体的には、館林町、郷谷村、大島村、六郷村、三野谷村、多々良村、渡瀬村という1町6村とともに合流し、新たな自治体である「館林市」が発足しました。赤羽村であった地域は、この合併以降、館林市の一部として現在に至っています。

村内にあった教育施設としては、赤羽村立赤羽小学校がありました。この学校は、村の子どもたちが学ぶ場として、地域社会の中心的な役割を担っていました。時代の流れとともに、この小学校の名称は変更され、現在は館林市立第五小学校として、引き続き地域の児童たちへの教育を担っています。旧村時代の学校が、形を変えながらも地域の教育活動を支え続けていることは、歴史の continuity（連続性）を示す重要な要素と言えるでしょう。

赤羽村の歴史や当時の社会状況について詳細を知るためには、当時の記録が収められた文献が貴重な手がかりとなります。特に、大正17年（1928年）に群馬県邑楽郡赤羽尋常高等小学校によって編纂・刊行された『赤羽村誌』は、村の地理、歴史、産業、文化、そして教育といった多岐にわたる分野の情報が網羅された一次史料です。この村誌は、国立国会図書館デジタルコレクションでも公開されており（参照：NDLJP:1036420）、当時の村の暮らしや出来事を現代に伝えています。地域史研究において、このような村誌は欠かせない資料です。

赤羽村は、明治の町村制施行から昭和の大合併に至る、日本の地方行政の変遷を体現する一例であり、群馬県の廃止市町村の一つとしてその名前が記録されています。赤生田村と羽附村という二つの源流から生まれ、約六十余年の時を経て館林市の一部へと統合された赤羽村の歩みは、地域の発展と行政区画の再編成という、より大きな歴史の流れの中で位置づけられます。村が存在した時代の記憶や記録は、地名や関連資料を通じて、今もなおこの地域に息づいています。

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