赤血球凝集反応
赤血球凝集反応（せっけっきゅうぎょうしゅうはんのう）は、その名の通り、赤血球が互いに集まって塊を作る現象を指します。これは血球凝集反応（けっきゅうぎょうしゅうはんのう）とも呼ばれ、特に血液検査やウイルス検査の分野で広く応用されています。
この反応が臨床の場で利用される主な目的は二つあります。
一つ目は、私たちの血液型を調べることです。血液型は、赤血球の表面に存在する特定の糖鎖構造（抗原）の種類によって決まります。例えば、A型抗原があればA型、B型抗原があればB型、両方あればAB型、どちらもなければO型となります。
血液型を判定する際には、これらの血液型抗原に特異的に結合する抗体を利用します。例えば、A型抗原に反応する抗体（抗A抗体）と患者さんの血液サンプルを混ぜ合わせたときに赤血球が凝集すれば、その赤血球にはA型抗原が存在することがわかります。同様に、抗B抗体を用いた検査も行います。
A型判定の例: 患者さんの赤血球に抗A抗体を加えて凝集が見られ、抗B抗体を加えても凝集が見られない場合、赤血球表面にはA型抗原のみが存在すると判断し、A型と判定します。
AB型判定の例: 抗A抗体、抗B抗体のどちらを加えても凝集が見られる場合、赤血球表面にA型抗原とB型抗原の両方が存在すると判断し、AB型と判定します。
* O型判定の例: 抗A抗体、抗B抗体のどちらを加えても凝集が見られない場合、赤血球表面にA型抗原もB型抗原も存在しないと判断し、O型と判定します。
さらに、血液型判定の精度を高めるため、患者さんの血清（抗体が含まれる成分）と既知の血液型の赤血球（A型赤血球、B型赤血球など）を反応させる検査も同時に行われます。これにより、患者さんの血清中にどのような血液型に対する抗体が存在するかを確認し、赤血球上の抗原による判定結果と照合します。
また、患者さんの血液中に、一般的な血液型判定に使用する抗体以外の、検査結果に影響を与える可能性のある異常な抗体が存在しないかを確認するために、直接クームス試験などの追加検査が行われることもあります。
二つ目の主な利用目的は、特定のウイルスの存在やおおよその量を調べることです。多くの種類のウイルスは、赤血球の表面にある特定の分子に結合する性質を持っています。
ウイルスを含む溶液に赤血球を懸濁させると、ウイルス粒子が複数の赤血球を架橋するように結合し、赤血球同士をくっつけます。これにより、赤血球が凝集塊を形成します。もしウイルスが存在しないか、あるいは濃度が低い場合は、赤血球は凝集せず、容器の底に沈殿します。しかし、ウイルス濃度がある程度以上高ければ、凝集した赤血球は沈殿しにくくなり、溶液中に浮遊したままに見えたり、沈殿が遅れたりします。
この現象を利用して、ウイルスの「おおよその量」を測定することができます。具体的には、ウイルスを含むサンプルを段階的に薄めた希釈液を用意し、それぞれに一定量の赤血球を加えます。そして、赤血球の凝集が見られる最も薄い希釈段階を調べます。この「凝集がみられる最大の希釈倍率」から、サンプルに含まれるおおよそのウイルス粒子数を推定するのです。この方法は、ウイルスの感染価を正確に測定するプラークアッセイのような手法に比べると精度は劣りますが、特殊な設備が不要で、安価かつ比較的短時間（通常30分程度）で結果が得られるという利点があります。
なお、この赤血球凝集試験で見られる凝集は、ウイルスの「感染力」とは直接関係がない点に注意が必要です。病原性を弱めたウイルスでも凝集反応を示すため、感染力を知りたい場合は別の検査が必要になります。
さらに、この赤血球凝集試験は、特定のウイルスに対する「抗体」の量を調べるためにも応用されます。これを血球凝集抑制試験（Hemagglutination Inhibition assay; HAI）と呼びます。
この試験では、一定量のウイルスと赤血球を用意し、そこに検査したい血清サンプル（抗体が含まれている可能性がある）を様々な濃度に希釈して加えます。もし血清中にウイルスの赤血球への結合を阻害する抗体（中和抗体など）が十分に含まれていれば、ウイルスは赤血球に結合できず、凝集は起こりません。
抗体を含む血清を段階的に薄めていき、ウイルスによる赤血球の凝集を完全に阻止できる最も薄い血清の濃度（最大の希釈倍率）を調べます。この最大の希釈倍率を「抗体価（こうたいか）」と呼び、血清中に存在する特定のウイルスに対する抗体の量を示す指標となります。これは、ワクチン接種の効果判定や過去の感染の有無を調べるためなどに利用されます。
このように、赤血球凝集反応は、基本的な現象でありながら、血液型判定からウイルス検査、さらには免疫状態の評価に至るまで、臨床検査の現場で幅広く活用されている重要な反応です。
この反応が臨床の場で利用される主な目的は二つあります。
血液型判定
一つ目は、私たちの血液型を調べることです。血液型は、赤血球の表面に存在する特定の糖鎖構造（抗原）の種類によって決まります。例えば、A型抗原があればA型、B型抗原があればB型、両方あればAB型、どちらもなければO型となります。
血液型を判定する際には、これらの血液型抗原に特異的に結合する抗体を利用します。例えば、A型抗原に反応する抗体（抗A抗体）と患者さんの血液サンプルを混ぜ合わせたときに赤血球が凝集すれば、その赤血球にはA型抗原が存在することがわかります。同様に、抗B抗体を用いた検査も行います。
A型判定の例: 患者さんの赤血球に抗A抗体を加えて凝集が見られ、抗B抗体を加えても凝集が見られない場合、赤血球表面にはA型抗原のみが存在すると判断し、A型と判定します。
AB型判定の例: 抗A抗体、抗B抗体のどちらを加えても凝集が見られる場合、赤血球表面にA型抗原とB型抗原の両方が存在すると判断し、AB型と判定します。
* O型判定の例: 抗A抗体、抗B抗体のどちらを加えても凝集が見られない場合、赤血球表面にA型抗原もB型抗原も存在しないと判断し、O型と判定します。
さらに、血液型判定の精度を高めるため、患者さんの血清（抗体が含まれる成分）と既知の血液型の赤血球（A型赤血球、B型赤血球など）を反応させる検査も同時に行われます。これにより、患者さんの血清中にどのような血液型に対する抗体が存在するかを確認し、赤血球上の抗原による判定結果と照合します。
また、患者さんの血液中に、一般的な血液型判定に使用する抗体以外の、検査結果に影響を与える可能性のある異常な抗体が存在しないかを確認するために、直接クームス試験などの追加検査が行われることもあります。
赤血球凝集試験（ウイルス検査）
二つ目の主な利用目的は、特定のウイルスの存在やおおよその量を調べることです。多くの種類のウイルスは、赤血球の表面にある特定の分子に結合する性質を持っています。
ウイルスを含む溶液に赤血球を懸濁させると、ウイルス粒子が複数の赤血球を架橋するように結合し、赤血球同士をくっつけます。これにより、赤血球が凝集塊を形成します。もしウイルスが存在しないか、あるいは濃度が低い場合は、赤血球は凝集せず、容器の底に沈殿します。しかし、ウイルス濃度がある程度以上高ければ、凝集した赤血球は沈殿しにくくなり、溶液中に浮遊したままに見えたり、沈殿が遅れたりします。
この現象を利用して、ウイルスの「おおよその量」を測定することができます。具体的には、ウイルスを含むサンプルを段階的に薄めた希釈液を用意し、それぞれに一定量の赤血球を加えます。そして、赤血球の凝集が見られる最も薄い希釈段階を調べます。この「凝集がみられる最大の希釈倍率」から、サンプルに含まれるおおよそのウイルス粒子数を推定するのです。この方法は、ウイルスの感染価を正確に測定するプラークアッセイのような手法に比べると精度は劣りますが、特殊な設備が不要で、安価かつ比較的短時間（通常30分程度）で結果が得られるという利点があります。
なお、この赤血球凝集試験で見られる凝集は、ウイルスの「感染力」とは直接関係がない点に注意が必要です。病原性を弱めたウイルスでも凝集反応を示すため、感染力を知りたい場合は別の検査が必要になります。
赤血球凝集抑制試験への応用
さらに、この赤血球凝集試験は、特定のウイルスに対する「抗体」の量を調べるためにも応用されます。これを血球凝集抑制試験（Hemagglutination Inhibition assay; HAI）と呼びます。
この試験では、一定量のウイルスと赤血球を用意し、そこに検査したい血清サンプル（抗体が含まれている可能性がある）を様々な濃度に希釈して加えます。もし血清中にウイルスの赤血球への結合を阻害する抗体（中和抗体など）が十分に含まれていれば、ウイルスは赤血球に結合できず、凝集は起こりません。
抗体を含む血清を段階的に薄めていき、ウイルスによる赤血球の凝集を完全に阻止できる最も薄い血清の濃度（最大の希釈倍率）を調べます。この最大の希釈倍率を「抗体価（こうたいか）」と呼び、血清中に存在する特定のウイルスに対する抗体の量を示す指標となります。これは、ワクチン接種の効果判定や過去の感染の有無を調べるためなどに利用されます。
このように、赤血球凝集反応は、基本的な現象でありながら、血液型判定からウイルス検査、さらには免疫状態の評価に至るまで、臨床検査の現場で幅広く活用されている重要な反応です。
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