赤電 (西武)

赤電（あかでん）

赤電は、西武鉄道において使われていた特有の塗装を施された列車の愛称です。その塗装は、上下がラズベリーレッド、窓周りがトニーベージュとデザインされており、1960年に初めて登場しました。赤電は、当時の新造車両および検査出場車に採用されたことからスタートし、451系、551系、601系、701系、801系、411系など、様々な車両形式でこの塗装が利用されました。

塗装の特徴として、車両の側面はトニーベージュを基本とし、雨どいと窓下部分がラズベリーレッドで塗り分けられています。正面部分は、ラズベリーレッドが屋根まで塗られ、窓下は中央に向かって斜めに塗り分けられる独特のデザインが見られます。後に701系や801系が登場する際には、正面の窓下部分がより直線的に変更され、左右にステンレスの飾り帯が加えられるなど、デザインが進化しました。

1960年代に入ると、これらの新型車両が次々と増備される中、既存の車両も赤電塗装に変更され、その結果、この塗装は西武鉄道の標準的な色合いとなりました。さらに、このデザインは西武のグループ企業である伊豆箱根鉄道や近江鉄道にも採用され、広く認知されることとなります。また、西武に在籍していた電気機関車にもラズベリーレッドの単色塗装が施され、赤電の存在感をさらに強めました。

しかしながら、1970年代後半以降、701系などの車両がレモンイエローの塗装に変更されると共に、601系以前の車両の廃車が進むことになります。新宿線系統および池袋線系統では1985年度に赤電塗装の車両は姿を消し、また多摩川線においても1988年には赤電が廃止されます。さらに、電気機関車もE31形への代替が進み、ラズベリーレッドの車両は1987年までに廃車されてしまいました。多摩湖線国分寺 - 萩山間で最後まで残っていた351系も1990年に廃車となり、赤電の時代は終わりを告げました。

その後、西武鉄道においては、1969年に登場した101系から新たにレモンイエローが主流の塗装色として使用されるようになりました。特に1977年に登場した2000系では、窓周りのベージュが省略され、レモンイエロー一色が採用されるなど、塗装は変遷を遂げました。1983年の3000系や1993年の9000系などでも、それぞれ異なる塗装が施され、新造車両でもレモンイエローが主流となりました。

2001年には、101系1159編成がイベントに備えて赤電塗装となるなど、その名残が見られました。さらに、2011年には伊豆箱根鉄道に移管された1100系1009編成や、2016年の近江鉄道の820系、2019年の三岐鉄道801系が赤電塗装に戻される一幕も見られました。加えて、2017年には多摩川線開業100周年記念として新101系1247編成に赤電塗装が施されるなど、 赤電の魅力は今も受け継がれています。

このように、赤電は西武鉄道の歴史において重要な役割を果たした塗装スタイルであり、現在の車両でもその影響が見え隠れしています。

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