走る喫茶室

走る喫茶室

概要

「走る喫茶室」（はしるきっさしつ）は、小田急電鉄が運行する特急列車、小田急ロマンスカーの車内で提供されたシートサービスです。1949年に始まったこのサービスは、特急列車の新しい形態のサービスとして多くの乗客に支持されましたが、1995年に終了しました。その後、一時的に復活したものの、2016年に再び廃止されました。

歴史的背景

小田急電鉄の前身、小田原急行鉄道は戦前から特急列車を運行しており、車内で飲み物を提供するサービスの試みも行われていたと言われています。しかし、戦後の都市の復興と観光客の増加に伴い、1948年から特急列車の運行が本格化しました。しかし初めは限られたサービスしか提供されておらず、1949年からはクロスシートを備えた1910形が導入され、専用の喫茶サービスがスタートします。これは「走る喫茶室」と呼ばれ、乗客に軽食や飲み物を提供するなど、画期的なサービスとして人気を集めました。

実施と発展

サービスの開始当初は、日東紅茶が飲料の提供を担いましたが、後に森永製菓など他の会社も関与しました。特に1957年に登場した3000形SE車では、サービスのスタイルがさらに進化し、2つのカウンターが設置されました。1963年に3100形NSE車が運行を開始すると、サービス提供体制が再編成され、森永製菓も参入しました。

サービスの人気は高く、1970年代までに通勤利用を除くほとんどの列車で「走る喫茶室」のサービスが提供されるようになりました。1981年にはこのサービスを題材にしたテレビドラマも制作され、さらに注目を集めることとなりました。

終焉と復活

1995年、利用者のニーズが変化し、サービスの提供が難しくなる中で「走る喫茶室」は終了しました。その後、小田急は別の形態の販売方法に移行しましたが、2005年に50000形VSE車の導入に伴い一時的にシートサービスが復活しました。この際、無線LANを利用したオーダーエントリーシステムが導入され、さらなる効率化が図られました。

しかし、2016年には運行体系が見直され、従来の「走る喫茶室」のサービスが再び廃止されました。今ではその名称や形式は過去のものとなってしまいましたが、当時のサービスは多くの記憶に残り、特急列車での旅を特別なものにしていました。

結論

「走る喫茶室」は、小田急ロマンスカーの象徴的な存在として、長い間乗客に愛され続けました。列車の旅に独自の魅力を与えたこのサービスの終了は、移りゆく時代とともに変わる旅の様式を象徴していますが、その思い出は多くの人々の心に刻まれています。

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