走馬燈 (アルバム)

『伊集院光 深夜の馬鹿力』発、伝説のインディーズCD「走馬燈」

2000年から2001年にかけて、ラジオ番組『伊集院光 深夜の馬鹿力』内で展開された人気企画から生まれたインディーズCD「走馬燈」。プロデューサー伊集院光のもと、リスナー参加型アイドルグループ「水死隊」が誕生し、その活動は予想外の展開を見せました。

企画の始まりと水死隊の結成

当時、モーニング娘。をはじめとする、つんくプロデュースのアイドルグループが社会現象を巻き起こしていました。その状況を逆手に取り、伊集院光は「儲けるため」と公言しつつも、実際にはメジャーヒットの要素をあえて無視した、斬新なアイドルグループ企画を立ち上げます。番組リスナーからメンバーを募集し結成されたのが「水死隊」でした。

手作り感満載のCD制作とゲリラ販売

水死隊はオリジナル曲「so-ma-to」を歌い、CD-Rによる手焼きシングルCDが制作されました。ジャケット写真は証明写真機、歌詞カードはメンバーによる手書きという、徹底した手作り感が特徴です。販売場所もユニークで、惣菜屋、床屋、駄菓子屋、エロ本自販機、野菜の無人販売所など、CD販売とは縁遠い場所が選ばれました。販売場所はリスナーに告知されず、初版70枚のうち売れたのはわずか9枚という結果に終わります。

その後、HMV（ヒカル・ミュージック・ヴォロ儲け）と称したゲリラ販売や、番組スタッフが珍妙な格好で荒川土手に立つ直販など、様々な販売戦略が展開され、ようやく完売に至りました。

焼死隊、変死隊への進化とアルバム制作

初版の売り上げを元手に、CD-Rドライブ付きPCを持つリスナーの協力を得て、二度目の生産が行われました。インク代節約のためレーベルは黒一色、歌詞カードも省略されるなど、徹底したコスト削減が図られました。第二次生産分694枚は完売、さらに第三次生産分2500枚が増産されましたが、1000枚ほどの在庫が発生。最終的には、当時のディレクターに通販を依頼し、完売させました。

グループ名は水死隊、焼死隊を経て変死隊と改名。最終形態として、演奏時間20分を超える「so-ma-to」ロングバージョンなどを収録したファーストアルバムを制作。業者に委託して大量生産を行い、全国のレコード店や書店で販売されました。発売までにはトラブルもありましたが、3週間ほどで11000枚を完売。700万円以上の売り上げを記録しました。

利益の行方とメンバーのその後

400万円近い純利益は、番組ノベルティの制作費に充当され、歌唱メンバーへの報酬は交通費のみ。CD-R焼きに協力したリスナーへの報酬は松屋の牛丼でした。また、変死隊は番組内でアイドル風の箱番組を持ち、自己紹介やヒッチハイク企画などを行いましたが、交通費の問題から自然消滅。その後は、アルバム完売までメンバーの近況が伝えられる程度でした。

収録曲

ファーストアルバム『走馬燈』変死隊 （CD番号:326-19-0930-4126）には、以下の楽曲が収録されています。

1. so-ma-to（ロングロングバージョン）
2. so-ma-to（おもしろfaceMIX）
3. so-ma-to（オリジナルカラオケ）
4. やさぐれサンタのテーマ
5. 人糞力人糞製作所
6. 音の世界1「アフロVS平和の象徴」
7. 音の世界2「さよなら流行」
8. UP'S音頭
9. so-ma-to

伝説のCD、その後のエピソード

2012年10月8日放送のラジオ番組「LINDA!〜今夜はあなたをねらい撃ち〜」では、元変死隊メンバーの女性が電話出演し、当時のエピソードを語りました。その女性は、当時のメンバーであったSEGA社員と現在も交流があるとのことです。

「走馬燈」は、伊集院光のユーモアとリスナーの熱意が融合して生まれた、インディーズCD史に残る伝説的作品と言えるでしょう。

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