起きろよスージー

エヴァリー・ブラザースが1957年にリリースした楽曲「起きろよスージー」（Wake Up Little Susie）は、彼らのキャリアを代表する一曲として広く知られています。フェリスとブーデロウ・ブライアント夫妻によって作詞作曲されたこの曲は、軽快なリズムと親しみやすいメロディで、発表されるやいなや瞬く間にヒットチャートを駆け上がりました。

アメリカ国内では、当時の主要な音楽チャートである『ビルボード』誌と『キャッシュボックス』誌のポップ・チャート双方で首位を獲得するという目覚ましい成功を収めました。さらに、カントリー・チャートにおいても7週連続でトップの座を維持し、ジャンルを超えた人気を証明しました。イギリスでもその勢いは衰えず、全英シングルチャートでは最高位2位まで上昇しています。この楽曲は、その音楽的な魅力と時代を超えた影響力から、音楽評論家からも高く評価されており、『ローリング・ストーン』誌が選ぶ「ローリング・ストーンの選ぶオールタイム・グレイテスト・ソング500」では318位にランクインするなど、ポップス史における重要性が認められています。

歌詞の内容は、高校生の少年がガールフレンドのスージーに語りかけるという、シンプルながらも共感を呼ぶストーリーが展開されます。二人はデートで映画館に出かけますが、そこでうっかり眠り込んでしまいます。そして目覚めた時には、門限である午後10時をはるかに過ぎ、午前4時になっていたという状況が描かれています。歌詞の中では、遅刻してしまったことに対する両親や友人たちの反応を案じ、どう言い訳しようかと悩む二人の様子が、ティーンエイジャー特有のリアルな感情を交えながら描かれています。

しかし、この曲はその発表当時、歌詞が示唆的であるとして一部で物議を醸しました。特にボストンのラジオ局では、内容がきわどいという理由から放送禁止措置が取られたとされています。これについて、ドン・エヴァリーは後のインタビューで、歌詞の中では少年とスージーが性的な関係を持ったとは明確に示唆されておらず、その解釈は聴き手側に委ねられている点を指摘しています。この曖昧さが、かえってリスナーの想像力を刺激し、当時の保守的な社会規範に対するある種の挑発として受け止められた側面もあったのかもしれません。

「起きろよスージー」は、その後の世代にも大きな影響を与え続けています。アメリカの政治家にも愛好者がおり、2000年の大統領選挙戦の最中、当時テキサス州知事だったジョージ・W・ブッシュ氏がテレビ番組『オプラ・ウィンフリー・ショー』に出演した際、お気に入りの一曲としてこの曲を挙げています。また、個性的な作風で知られる映画監督デヴィッド・リンチが、生まれて初めて自分自身のお金で購入したシングル盤であったというエピソードも有名で、この曲が多くの人々の記憶に深く刻まれていることを示しています。

日本語圏では、「起きろよスージー」という邦題が最も一般的ですが、「スージーちゃん起きなさい」や「スージーのお目覚め」といった別称で言及されることもあります。この楽曲は、時代やジャンルを超えて数多くのアーティストによってカバーされており、その普遍的な魅力がうかがえます。主なカバー・バージョンには以下のようなものがあります。

ダニー・オズモンド（1971年）
グレイトフル・デッド（1973年）
フライング・ブリトー・ブラザーズ（1974年）
ロギンス&メッシーナ（1975年）
スージー・クアトロ（1977年）
サイモン&ガーファンクル（1982年のライブ盤に収録、シングルとしてもリリースされ全米27位）

「起きろよスージー」は、ティーンエイジャーのちょっとした失敗談をユーモアと不安を交えて描き出した歌詞と、エヴァリー・ブラザースならではの美しいハーモニーとギターワークが光る、1950年代を代表するポップスの名曲として、今なお色褪せることなく愛され続けています。

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