起承転結12

松山千春『起承転結12』

松山千春のシングル・コレクション・アルバム『起承転結12』（きしょうてんけつじゅうに）は、2010年10月1日にリリースされました。これは、彼のキャリアを通じて定期的に発表されているシングル曲を集めた「起承転結」シリーズの第12作目にあたる重要な作品です。長年にわたり第一線で活躍を続ける松山千春の音楽活動において、シングル曲は常にその時々の彼のメッセージや音楽性を最も直接的に表現する媒体であり続けてきました。この「起承転結」シリーズは、そうしたシングル曲群を時代ごとに区切り、まとめて提示することで、彼の音楽の軌跡を分かりやすく辿れるように企画されています。『起承転結12』もまた、このシリーズの系譜に連なるアルバムとして、特定の期間に発表されたシングル曲に焦点を当てています。

本作には、松山千春が2009年から2010年にかけて発表したシングルの中から、第61弾シングルとしてリリースされた「捨石」から、それに続く「白い雪」「伝える」「純」「初雪」といった楽曲を経て、第66弾シングル「慕う」までの、合計6枚のシングルに収録されている全楽曲が網羅されています。つまり、これらの6枚のシングルのA面曲と、それぞれに収められたカップリング曲を含めた合計14曲が、このアルバム一枚に収録されているのです。シングルがリリースされるたびに耳にしてきた楽曲はもちろんのこと、普段あまり注意深く聴かれないことも多いカップリング曲も同時に収録されている点は、このコレクションアルバムの大きな特徴であり、魅力と言えるでしょう。カップリング曲には、A面曲とはまた異なる音楽的な試みや、よりパーソナルな想いが込められていることも少なくありません。全14曲というボリュームは、この時期の彼の創作活動の幅広さを示すものとなっています。

「起承転結」シリーズが持つ意義は、単にヒット曲を集めたベストアルバムとは異なります。特定の期間に発表されたシングルを、その順序に沿って、あるいは関連する形でまとめて聴くことで、その時期の松山千春が何を感じ、何を歌おうとしていたのかをより深く理解することができます。時代の空気や社会情勢、そして彼自身の内面的な変化が、シングル曲には色濃く反映されているからです。『起承転結12』は、2009年から2010年という時期に焦点を当てることで、この期間における彼の音楽的な試みやメッセージの変遷を記録するドキュメンタリーのような役割を果たしています。ファンにとっては、当時リアルタイムで聴いてきた楽曲群を改めて一つのパッケージとして手元に置き、聴き返すことで、当時の思い出と共に音楽を楽しむことができます。また、この時期の松山千春の音楽に初めて触れるリスナーにとっても、このアルバムは彼の世界観を知る上で優れた入門編となり得ます。

2010年代に入り、松山千春はキャリアを重ねながらも、変わらぬ情熱を持って音楽制作とライブ活動を続けていました。『起承転結12』は、まさにそのような時期にリリースされた作品であり、彼の精力的な活動の一端を捉えています。収録されている楽曲には、彼らしい力強いメッセージソングから、情感豊かなバラード、そして時にはユーモアを交えた楽曲まで、多様なスタイルが見られます。これらの楽曲を通じて、リスナーは当時の松山千春の心境や、彼が社会に向けて、あるいは個人的な関係に向けて発していた言葉に触れることができるでしょう。

このように、『起承転結12』は、松山千春の「起承転結」シリーズの重要な一作として、特定の期間に発表されたシングル群を網羅的に収録することで、彼の音楽的な歩みを振り返り、その深淵に触れることができる作品として価値を持ちます。単なるシングル集としてだけでなく、一人のアーティストの創造の軌跡を記録したドキュメントとして、そしてファンにとっては欠かせないコレクションの一部として、このアルバムは今日も多くの人々に聴き継がれています。それは、彼の音楽が持つ普遍的な力と、時代を超えて人々の心に響くメッセージ性が、このアルバムに凝縮されているからに他なりません。

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