起電力

起電力の解説

起電力とは、電流を生じさせる電位差のことを指します。英語では「electromotive force」と呼ばれ、略称はEMFです。単位はボルト（V）で表され、様々な方法で生成されます。具体的には、発電機における電磁誘導、熱電効果によるもの、光電効果を利用したもの、化学反応を用いたものといった多くの方法があります。

化学電池と起電力

化学電池の起電力は、電気化学的平衡状態での電極間の電位差です。このときの電位差は、開回路電圧とも考えられますが、厳密には異なる場合があります。たとえば、複数の電気化学反応が一つの電極で起こると、電流がゼロでも平衡が成立しないことがあります。このような状況では、起電力と開回路電圧に違いが生まれます。

起電力の定義に関しては、1953年にストックホルムでIUPACが勧告した規約が存在し、これにより起電力の符号に関する混乱を避けています。

電池の内部反応

起電力を理解するために、典型的な電池図式を考えます。たとえば、次のような電池を想像してください：

```
T | M1 | S | M2 | T′
```

ここで、M1やM2は電極、Sは電解質の溶液、TやT′は端子を示しています。この電池内では、正電荷が左から右に移動する過程で、酸化反応や還元反応が進行します。

このとき、電極M1上では酸化反応が起こり、次のように表されます。

```
R(M1) → O(M1) + n e−(T)
```

一方、電極M2では還元反応が起こり、次のようになります。

```
O′(M2) + n e−(T′) → R′(M2)
```

これらの反応が進行した際、電池全体における反応式は次の通りです。

```
R(M1) + O′(M2) + n e−(T′) → O(M1) + R′(M2) + n e−(T)
```

この反応が電気化学的平衡に達した時、端子TとT′間の電位差が起電力Eを表します。起電力Eは、電気化学ポテンシャルや反応数、ファラデー定数を用いて次のように計算されます。

```
E = - rac{( ext{μ}_{e^{-}}^{T′} - ext{μ}_{e^{-}}^{T})}{F}
```

起電力の符号と電極電位

電極のどちらか一方の状態を考慮した場合、半電池または単極と呼ばれます。このような半電池の組み合わせにより電池が形成されます。特定の構成の電池が持つ起電力は、「平衡電極電位」として知られる右側の電極についての定義がなされます。特に、すべての物質の活量が1である場合の平衡電極電位は「標準電極電位」として特別に扱われます。

起電力の計算例

起電力を求める際には、電極電位を用いると便利です。具体的には、右側の電極の電位から左側の電極の電位を引いて計算します。例えば、ダニエル電池という亜鉛と銅の電池の標準状態における起電力を見てみましょう。

ダニエル電池の電池図式は次のようになります。

```
Cu | Zn | ZnSO4(aq, a_{Zn2+}=1) || CuSO4(aq, a_{Cu2+}=1) | Cu
```

この場合、左側の電極（アノード）は次のように表されます。

```
Zn → Zn2+ + 2 e− ; E0(Zn2+ | Zn) = -0.763 V (vs SHE)
```

右側の電極（カソード）は次のようになります。

```
Cu2+ + 2 e− → Cu ; E0(Cu2+ | Cu) = +0.340 V (vs SHE)
```

したがって、電池の標準状態における起電力E0は次のように計算されます。

```
E0 = E0(Cu2+ | Cu) - E0(Zn2+ | Zn) = (+0.340) - (-0.763) ≈ 1.103 V
```

その他の起電力の種類

起電力には化学電池以外にも多くのタイプがあります。

• - 誘導起電力: 電磁誘導により生じる起電力で、主に発電機で利用されます。
• - 熱起電力: ゼーベック効果によって異なる温度差が存在する場合に生じ、熱電対に応用されます。
• - 光起電力: 光の照射により半導体で生成される起電力で、太陽光発電やフォトダイオードに使われます。

結論

起電力は、多くの電気エネルギー生成において重要な役割を果たしています。化学電池をはじめ、色々な方法で発生する起電力は、我々の日常生活や産業界での重要な技術の基礎となっています。

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