超交換相互作用

超交換相互作用：陰イオンを介した磁性イオン間の相互作用

超交換相互作用とは、2つの磁性イオン間に介在する陰イオンを介して発生する磁気的な相互作用のことです。直接的に相互作用するのではなく、陰イオンが仲介役となり、間接的に磁気的な影響を及ぼし合います。この現象は、磁性体の性質を理解する上で非常に重要な役割を果たしています。

この概念は、オランダの物理学者ヘンリク・アンソニー・クラマースによって最初に提唱され、その後、アメリカの物理学者フィリップ・ウォーレン・アンダーソンによって詳細な理論的説明が与えられました。2つの磁性イオンのスピンをそれぞれS₁、S₂とすると、それらの間の超交換相互作用は、J S₁・S₂ という形で表現されます。ここでJは交換相互作用定数で、この符号によって相互作用が強磁性的（J>0）か反強磁性的（J<0）かが決定されます。

グッドイナフ-金森則：超交換相互作用の符号を予測する規則

超交換相互作用の交換相互作用定数Jの符号は、グッドイナフ-金森則によって予測することができます。この経験則は、磁性イオンの種類、配置、そしてそれらと陰イオンとの間の幾何学的関係からJの符号を推定することを可能にします。

いくつかの簡単な例を挙げて説明しましょう。まず、2つの磁性イオンとそれらの間の陰イオンが一直線上に並んでいる場合を考えます。

同種の磁性イオンの場合: J < 0 （反強磁性的）となります。スピンは互いに逆向きに整列しようとするため、全体としては反強磁性を示します。
一方のd電子の数が5以上、もう一方が5以下の場合: J > 0 （強磁性的）となります。この場合は、スピンが互いに同じ向きに整列しようとするため、強磁性を示します。

次に、磁性イオン、陰イオン、磁性イオンが90°の角度をなす場合を考えます。

同種の磁性イオンの場合（d⁵を除く）: J > 0 （強磁性的）となります。
異種の磁性イオンの場合: J < 0 （反強磁性的）となります。

これらの規則は、結晶場における電子の状態、そしてp軌道とd軌道の対称性に基づいて理論的に説明することができます。より複雑な系では、これらの規則を単純に適用できない場合もありますが、磁性体の磁気的性質を理解するための重要な指針となっています。

まとめ

超交換相互作用は、磁性体の磁気的性質を理解する上で非常に重要な概念です。陰イオンを介した間接的な相互作用によって、磁性イオンのスピン配置が決定され、強磁性や反強磁性といった磁気秩序が生じます。グッドイナフ-金森則は、この相互作用の符号を予測するための簡便で有用な規則であり、多くの磁性体の性質を説明する上で貢献しています。より詳細な理解のためには、量子力学的な取り扱いが必要となりますが、本稿ではその基礎的な概念と、グッドイナフ-金森則による予測を解説しました。

参考文献

* 中村伝：「磁性」、槙書店 (1965)

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