超長鎖脂肪酸

超長鎖脂肪酸（VLCFA）とは

超長鎖脂肪酸（Very long chain fatty acid、VLCFA）は、22個以上の炭素原子が連なった非常に長い炭素鎖を持つ脂肪酸の一種です。一般的な脂肪酸と比較して、VLCFAはその鎖長が非常に長いため、代謝経路においても特殊な処理が必要となります。

VLCFAの代謝の特徴

多くの脂肪酸はミトコンドリア内で代謝されますが、VLCFAはその鎖長が長すぎるため、ミトコンドリアでは代謝することができません。そのため、VLCFAは細胞内の別のオルガネラであるペルオキシソームで代謝されます。ペルオキシソームは、VLCFAのβ酸化と呼ばれる反応を触媒し、より短い脂肪酸に分解します。

VLCFAと関連する疾患

VLCFAの代謝に関わる酵素の異常や、ペルオキシソームの機能不全は、VLCFAの蓄積を引き起こし、様々な疾患の原因となります。代表的な疾患としては、副腎白質ジストロフィー（ALD）が挙げられます。

副腎白質ジストロフィー（ALD）

ALDは、VLCFAの代謝異常によって、脳や副腎などの組織にVLCFAが蓄積する遺伝性の疾患です。VLCFAの蓄積は、神経細胞のミエリン鞘を損傷させ、神経症状や副腎機能不全を引き起こします。

関連する遺伝子とタンパク質

VLCFAの代謝に関わる遺伝子やタンパク質には、以下のようなものがあります。

ACADVL：非常に長い鎖のアシルCoA脱水素酵素をコードする遺伝子。
SLC27A2：脂肪酸輸送に関わるタンパク質をコードする遺伝子。
SLC27A5：脂肪酸輸送に関わるタンパク質をコードする遺伝子。

セロチン酸

セロチン酸は、副腎白質ジストロフィーと関連するVLCFAの一種です。

研究の歴史と今後の展望

VLCFAとその代謝異常に関する研究は、1980年代初頭に副腎白質ジストロフィーの患者におけるVLCFAの異常な蓄積が発見されたことから始まりました。現在では、VLCFAの代謝経路や疾患との関連性が詳細に解明されつつあり、遺伝子治療や酵素補充療法などの新たな治療法の開発が進められています。

参考文献

Moser, H. W.; Moser, A. B.; Frayer, K. K.; Chen, W.; Schulman, J. D.; O'Neill, B. P.; Kishimoto, Y. (1981). “Adrenoleukodystrophy: Increased plasma content of saturated very long chain fatty acids”. Neurology 31 (10): 1241–1241. doi:10.1212/WNL.31.10.1241.

まとめ

VLCFAは、その独特の代謝経路と疾患との関連性から、医学研究において重要なテーマです。今後の研究により、VLCFA代謝異常による疾患の治療法が開発されることが期待されます。

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