越山会

越山会：田中角栄を支えた巨大後援会

越山会（えつざんかい）は、新潟県選出の政治家であり、内閣総理大臣も務めた田中角栄を支えた強力な後援会組織です。最盛期には300以上の支部と約9万5千人もの会員を擁し、田中の政治活動を強力にバックアップしました。

発足と経緯

越山会の前身は、田中の政治活動を支援する地元の若者グループ「田中党」でした。その後、いくつかの後援会を経て、1953年6月28日に正式に「越山会」が発足しました。命名は田中角栄自身の指示によるものとされ、初代会長には菊田次郎が就任しました。

名称の由来は、田中角栄が愛用していた雅号「越山」にちなんでいます。上杉謙信の漢詩『十三夜』の一節から取られたという説もありますが、田中自身は機関紙で否定しています。

発足後、越山会は田中の地盤である新潟3区を中心に急速に拡大し、既存の後援会も合流・改名する形で組織を強化していきました。1960年には越後交通本社に本部を置き、組織全体を統括する秘書課が設けられました。

組織運営と影響力

越山会は、支部ごとに得票率を競わせる独自の集票システムを導入し、組織全体の活性化を図りました。また、「目白詣で」と呼ばれる東京の田中邸への訪問ツアーを企画するなど、会員の結束を強めるための活動も積極的に行いました。

越山会は、地元の土木業界にも大きな影響力を持っていました。公共事業に関する陳情を整理する「越山会査定」は、業界関係者にとって大きな意味を持っていました。会計責任者は「越山会の金庫番」と称された佐藤昭子が担当し、組織の財政を管理していました。

越山会は、田中の政治活動を支えるだけでなく、新潟県のインフラ整備にも貢献したと評価されています。公共事業の誘致や就職斡旋などを通じて、地元に利益をもたらす利益誘導型の政治は、田中角栄の政治手法の典型とされています。

解散とその後

田中角栄がロッキード事件で逮捕された後も、越山会は田中を支持し続けましたが、1990年に田中が政界を引退すると、後継者を擁立することなく解散しました。

越山会の解散後、組織の幹部が公金流用で逮捕される事件が発生し、田中の影響力の低下を象徴する出来事として報道されました。田中の長女である田中眞紀子が政界に進出した際、越山会の復活が期待されましたが、眞紀子の方針と合わず、一部の会員が支持するにとどまりました。

越山会の組織運営や影響力は、その後の政治団体の参考とされ、小沢一郎の「陸山会」や中村喜四郎の「喜友会」などに影響を与えました。

越山会は、田中角栄という一人の政治家を支えただけでなく、その後の日本の政治にも大きな影響を与えた組織として、その名を歴史に刻んでいます。

2023年には最後の越山会出身議員が引退し、地元政界から越山会の名前が消えました。

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