踊る一寸法師

踊る一寸法師

『踊る一寸法師』は、江戸川乱歩が手掛けた短編小説であり、1926年1月に『新青年』に発表されました。この作品は、エドガー・アラン・ポーの『ちんば蛙』からの影響を強く受けています。物語はサーカス団を舞台に、一寸法師という特徴的なキャラクターを中心に進行します。

あらすじ

物語の舞台は賑やかなサーカス団。そこには「緑さん」と呼ばれる一寸法師が存在し、彼は周囲からいじめられる日々を送っています。特に彼を標的にしているのは、紫繻子の男という嫌な存在で、緑さんにさまざまなひどい仕打ちをする人物です。しかし、ある日、その紫繻子の男が緑さんに提案します。「隠し芸を見せてほしい」と。これを機に、緑さんは自らの技を披露することになりました。

緑さんが選んだのは「美人獄門の魔術」という奇術。この奇術は、女性が入った箱に外から剣を突き刺すという内容で、危険な局面が狙われています。被験者として選ばれたのは、美しい玉乗りのお花です。緑さんは準備を整え、緊張感漂う中でパフォーマンスを開始します。観衆は彼の演技に息をのみ、果たして成功するのか、という期待と不安が交錯します。

奇術が進む中、緑さんは最後の仕上げとして、お花の首を切り落とします。成功したように見えましたが、しかし、その後しばらくしてもお花の姿が見当たらず、記述者である「私」は不安を募らせます。不吉な予感が胸を締め付ける中、サーカスのテントの内部に煙が立ち込め始めます。「私」は、火事が発生したと考えテントから飛び出します。

テントの外に出た「私」が見たのは、テントの上で踊る一寸法師の姿でした。彼の手には黒い液体が滴っている奇妙な物体があり、その様子は一層不吉な雰囲気を生み出します。この場面は、緑さんの奇術とその結果が恐ろしい方向に進んでいくことを暗示しています。

出版情報

この作品は、1973年に角川文庫『芋虫』として出版され、その後も新潮文庫『江戸川乱歩名作選』の形で2016年に、さらに光文社文庫『乱歩の猟奇 江戸川乱歩セレクション』として2017年に再版されています。読み継がれるこの短編小説は、乱歩の独特な世界観とともに、彼の作風が凝縮された一作と言えるでしょう。

外部リンク

• - 『踊る一寸法師』：新字新仮名 - 青空文庫

本作品は、サーカスの華やかさとその影に潜む暗い感情を映し出し、読者に深い印象を与える物語となっています。

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