車力

車力（しゃりき）についての詳細

車力とは、平安時代中期から明治時代にかけて、荷物を運ぶために車両を牽引していた人々を指します。彼らは貨物の運搬を主な業務としており、その存在は日本の運送業の歴史において重要な位置を占めています。

歴史的背景

康平元年（1058年）に作成された『東大寺修理所修理記』の中には、東大寺が貢納米の9％を運賃として車力を利用していたという記録があります。これは、当時の車力が経済活動において重要な役割を果たしていたことを示しています。また、『新猿楽記』にも車力という名称が登場し、同時期の運送業の発展を確認できる資料となっています。

中世には、車借の傘下で働く車力が多く見られました。車借は自ら荷車を所有する業者であり、車力はその荷車を借りて運搬作業に従事していました。特に荘園制度が普及する中で、荘園の領主は地元での年貢の搬入に車力を利用することが一般的でした。

江戸時代の車力

江戸時代になると、運送手段として大八車やべか車が中心的な存在となりました。この時期、車力は「車宿」と呼ばれる親方的な業者に雇われることが多く、小規模な車力が零細な運送業を行っていました。これに対して、自ら大八車やべか車を所有して独立して事業を展開する「車持」と呼ばれる人々も現れ、業態は多様化していきました。

また、江戸時代の都市部では、街道の整備や物流の発展に伴い、車力の役割はますます重要になりました。特に、商人や農民が自らの商品の運搬を行うために車力を利用するケースも増え、経済活動の一翼を担っていました。

車力の社会的役割

車力は、経済活動だけでなく、地域社会の発展にも寄与していました。彼らは物流を支える重要な職業であり、地域の必需品や農産物を迅速に搬送することで、地域経済の活性化に貢献しました。また、運搬作業には常に人手が必要であったため、車力の職業は多くの人々の生計を支える存在でもありました。

参考文献

• - 丸山雍成「車力」（『国史大辞典 7』（吉川弘文館、1986年） ISBN 978-4-642-00507-4）
• - 深井甚三「車力」（『日本歴史大事典 2』（小学館、2000年） ISBN 978-4-095-23002-3）

このように、車力の歴史は日本の物流発展において非常に重要なものであり、彼らの存在があったからこそ、様々な物資が効率的に運搬され、多くの人々の生活が支えられていたことが理解できます。

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