車軸カウンタ

車軸カウンタとは

車軸カウンタは、鉄道において列車の通過を検知するために利用される装置です。通常、列車の位置を把握するためには軌道回路が広く用いられていますが、特定の条件下ではこの車軸カウンタが選ばれることもあります。

検知の仕組み

車軸カウンタは、列車が通過する特定の区間の両端に位置する2つの検知点を設置します。列車が区間始点のトレッドルを通過すると、カウンタは1つ加算されます。一方で、区間終点の検知点を通る際にはカウンタが減算され、最終的にカウンタの値がゼロになることで、その区間に列車が存在しないことが確認され、次の列車が進入することが可能となります。この計算は、特に安全性を重視した計算機「エバリュエータ」によって実施されます。エバリュエータは主に車軸カウンタの近くに設置され、検知器と接続されています。これにより、エバリュエータと検知点を離れた場所に配置することが可能となり、信号装置が集中化されている場合に特に有利です。

車軸カウンタの利点

車軸カウンタは、湿度が高いトンネルなど、特殊な環境での運用において特に役立ちます。たとえば、イギリスのセヴァーントンネルでは、湿度が原因で通常の軌道回路が信頼性を欠くため、車軸カウンタが使用されます。鉄製の枕木を使用しているため、レール間の絶縁が行えず、軌道回路が使えない場所でも有効です。また、長い区間を管理する際に、複数の回路が必要になる軌道回路とは異なり、車軸カウンタでは効率的に運用が行える場合があります。

ヨーロッパ大陸においては、車軸カウンタの信頼性は同じ目的のために使われる軌道回路と比べ、約5倍も優れていると言われています。このため、過去に信号装置の不具合で列車の遅延が多発していた区間でも、車軸カウンタの導入により改善が見込まれるケースがあります。これにより、事故の発生確率が低下することに貢献しています。

車軸カウンタの欠点

一方で、車軸カウンタには短所もあります。特に停電などが発生すると、通過した車軸の累計記録が消失し、その結果手動でカウンタをリセットする必要が生じます。このリセット作業は人間の手によるため、誤操作のリスクを含んでしまいます。実際、セヴァーントンネルでは不適切なリセット処理が原因で事故が発生した例もあります。

カウンタをリセットする方法には主に3つの方式があります。

1. 協調リセット（Co-operative reset）
信号技術者と信号扱手が協力してカウンタをリセットし、その後運転を再開します。

2. 予備リセット（Preparatory reset）
車軸カウンタの内部ロジックを利用する方法です。具体的には、リセットする区間に低速で列車を進入させ、その列車が区間を出たことを確認してからリセットを行います。

3. 条件リセット（Conditional reset）
リセットしたい区間から出て行く方向にある列車のみを対象にリセットを行います。この方法では、リセット時に区間にいる列車が外に出たことが保証され、運行の安全性が向上します。

どの方法を選ぶかは、国によって異なる場合がありますが、共通して人間の操作や自動的な処理が求められます。

レール破損の検知

最後に、車軸カウンタには軌道回路が持つようなレール破損の検知機能が欠けています。一般的に、レール破損は軌道回路で用いられる絶縁継ぎ目の周辺で発生することが多いですが、車軸カウンタではそれが必要ないため、そもそもレールが破損する可能性が低くなります。

まとめ

車軸カウンタは特定の条件下で優れた性能を発揮し、信頼性の高い検知装置として鉄道の運行に寄与しています。一方で、その運用には注意が必要であり、特にリセット作業においては人間の介入が事故を引き起こす可能性も孕んでいるため、慎重な取り扱いが求められます。

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