軍事国道

軍事国道とは

軍事国道とは、軍隊の要請に基づき、国によって建設・運営された道路のことです。日本では、主に大正時代から昭和時代にかけて、帝国陸海軍や陸軍省・海軍省の要請により、内務省が認定した国道を指します。

日本における軍事国道の歴史

軍道の存在自体は、軍隊施設ができた頃から存在していましたが、日本では明治維新以降、周辺列強諸国からの防衛の必要性が高まり、全国に鎮台や鎮守府が設置されるようになりました。これらの施設間の連絡を確保するため、国費で道路が建設される必要性が生じ、1885年（明治18年）には、全国の国道に番号が付与され、その中に鎮台を連絡する国道も定められました。その後、大正時代にかけて、鎮守府や師団を連絡する国道が整備されていきました。

1919年（大正8年）には、旧道路法が公布され、明治期に制定された国道路線は廃止され、新たに大正国道が定められました。この時、

1. 東京市から神宮、府県庁所在地、師団軍司令部所在地、鎮守府所在地、または重要な開港に達する路線
2. 主に軍事目的を有する路線

が規定されました。2は当初定められませんでしたが、翌年には26路線が指定されました。これらの路線は、軍事上の機密保持のため、起終点のみが指定され、国道番号には「特」が付与されていました。これが事実上の軍事国道であり、全額国庫負担で整備されました。

当初26路線、総延長275kmだった軍事国道は、太平洋戦争終戦時には41路線まで増加しましたが、戦時中の予算削減や資材不足により、未完成のまま終わったり、十分な修繕が行われなかったりした道路も多く存在しました。そのため、一部は軍用車両の通過すら困難な状況でした。

軍事国道の現状

1934年（昭和9年）時点での日本の全道路舗装面積に対する軍事国道の舗装率はわずか0.09%で、一般国道が16.02%であったのと比較して、著しく低い水準でした。また、未改良区間は全体の87.28%に達し、道路整備の遅れが目立ちました。これは、当時の内務省が「開通さえすればよい」という程度の認識であったことや、昭和初期の恐慌の影響も原因と考えられます。

幅員に関しても、3.7m未満が37%（一般国道13%）、3.7-5.5mが52%（同36%）と、一般国道と比較して狭く、軍事国道としての役割を十分に果たせなかった側面がありました。

まとめ

軍事国道は、軍事目的のために整備された重要なインフラでしたが、必ずしも十分に整備されたとは言えず、当時の日本の財政状況や戦争による影響も大きく受けました。現在では、これらの軍事国道は一般の道路として利用されていますが、その歴史的背景を知ることは重要です。

関連項目

道路
国道
* 戦争遺跡

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