軍旗はためく下に

軍旗はためく下に

結城昌治による短編集『軍旗はためく下に』は、1970年に発表された作品であり、第63回直木賞を受賞しました。この小説は、敗戦から数十年後に語られる回顧録の形を取り、陸軍法に基づく死刑が定められた罪名が章題に用いられています。物語は、多くの軍関係者との対話を通じて戦争の実態を明らかにしようとする試みに焦点を当てています。収録されている短編作品は、各々異なる視点から戦争の暗い側面を描写しており、特に個々の登場人物の苦悩や葛藤が強く表現されています。

収録作品一覧

1. 敵前逃亡・奔敵
2. 従軍免脱
3. 司令官逃避
4. 敵前党与逃亡
5. 上官殺害

敵前逃亡・奔敵

小松伍長は、元々は恐れを抱く性格でしたが、ある出来事を境に勇敢さを発揮します。この変化の背後には彼の恋心があり、彼は占領地の村落に訪れているうちに行方不明となります。しかし、彼の生死は不明のまま「敵前逃亡」とされてしまいます。彼に何が起こったのかは謎に包まれています。

従軍免脱

矢部上等兵は自ら傷をつけて従軍を免れようとした結果、死刑にされます。しかし、彼の行動は真実の背景を知るための計画であり、周囲との語り合いを通じてその理由を見出そうとします。

司令官逃避

中隊長は部隊を守るために退避命令を下し、上官から厳しく叱責されます。彼の運命は軍法会議で死刑になるとの噂が立つ中、彼の部下である戸田は戦地をさまよい、同僚たちの運命を知ろうと奮闘します。

敵前党与逃亡

馬淵軍曹は敵前逃亡とされるも、証拠が何もない状況です。彼の死の真実を追求する中で、関係者の証言が交錯し、彼の人間像は淡々と変わっていき、真実の輪郭が曖昧になっていきます。

上官殺害

小隊長の横暴に苦しむ部下たちが、彼を殺害し事故死に見せかけます。敗戦後、捕虜となった兵士がその事実を公にしますが、小隊長の行為は次第に忘れ去られます。

映画化

1972年には、深作欣二監督による映画『軍旗はためく下に』も製作されました。この映画は、原作の中から『敵前党与逃亡』と『上官殺害』を基にしており、戦争の悲劇をより具体的に映像化しています。また、物語の舞台は、原作の架空地名からニューギニアに設定されています。

映画では、戦争の残酷さや人間の苦悩が生々しく映し出されています。キャストには丹波哲郎や左幸子らが名を連ね、彼らの演技によって物語がさらに深みを増しています。

結論

この作品は、戦争の過酷さと、その影響を受ける人々の苦悩を明確に描写しており、読者に強い印象を残します。『軍旗はためく下に』は、ただのフィクションではなく、実在の事件に基づく深いメッセージが込められています。この作品を通じて、我々は戦争とその影響について再考する機会を得ることができます。

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