軍記物

軍記物について

概要

軍記物とは、主に室町時代末から近世初期にかけて、戦国武将や大名の武勲を物語形式で記述した書物のことを指します。このジャンルは、武士たちが活躍する合戦の記録を中心に展開され、多くの作品が存在しています。軍記は「初期軍記」、「前期軍記」、「後期軍記」の3つに分類され、歴史的な背景や時代の変遷が反映されています。

特に「初期軍記」には『将門記』や『陸奥話記』などの先駆的な作品が含まれ、「前期軍記」には『平家物語』や『太平記』が代表的です。そして、室町時代以降の「後期軍記」と呼ばれる作品群は、より実録的で家伝の特徴が強調されていきます。これらの作品は、特定の武士や家に対する顕彰や創作的な要素を包含していますが、同時に作者の家系意識や先祖への思いを読み取ることもできます。

成立背景

軍記物が成立した背景には、元和偃武によって安定した江戸幕府の時代が存在します。この時期、大名家は自家の正当性や高貴性を主張するため、自らの系譜や歴史を改竄する傾向がありました。「我が家の今日の栄光は、先祖の命懸けの武勲の賜物である」といった意図が作品に込められていたと考えられます。また、後の世代に先祖の偉業を伝える目的もあったでしょう。

軍記物の特徴

軍記物は、ほぼすべての主要な大名家に関連して存在しており、歴史書や文学集に多数収録されています。しかし、これらの多くは子孫からの口述や噂に基づいて記録されているため、一次史料と矛盾する内容や、改竄された系図に基づく記事も見受けられます。したがって、記録としての正確性は一律ではなく、作品ごとに異なります。

「初期軍記」や「前期軍記」は文学としての質が高く、研究対象として注目されることが多いのに対し、「後期軍記」特に「戦国軍記」は、裾野が広く、様々な展開を示す時代です。しかし、基本的な調査や研究は未だ整っていない現実があります。継承されている原文のほとんどは未活字化で、現代語訳が存在しないものも多いです。

軍記物の一覧

以下は、戦国軍記事典（和泉書院）に基づいた軍記物の主な作品です：

• - 室町軍記: 明徳記、応永記、永享記、応仁記など
• - 戦国軍記: 足利季世記、公方両将記、舟岡山軍記、九郎政元記など、各地の歴史を描いた作品が豊富に存在します。

これらの書物は、後世に至るまで歴史の資料としてだけでなく、武士の精神や文化を知るための貴重な資料となっています。特に、武士の生き様や戦記という観点から、研究や評価を受ける価値があります。

参考文献

『戦国軍記事典 群雄割拠篇』と『戦国軍記事典 天下統一篇』など、これらの作品の成立背景や意義を探るためには、専門文献に当たることが重要です。

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