転バシ

転バシ（ころバシ）

転バシは日本の各地に存在する妖怪を指し、特に人間を転ばせることを目的に、地面を転がるように移動します。この妖怪たちは、地域ごとに異なる特徴や伝承を持ち、人々の恐れや好奇心を掻き立ててきました。以下、代表的な転バシの妖怪について紹介します。

イジャロコロガシ

イジャロコロガシは長野県南佐久郡南牧村の海ノ口に伝わる妖怪です。名前の由来となっている「イジャロ」は、器物のざるを指します。この妖怪は、ある古いお堂で夜遅くにざるが床を転がり、その姿を見せると人間の顔に変身するというもの。特に子供を脅かす存在であったため、地域の人々は怖れを抱いていました。この妖怪は、地域の深い文化や人々の生活に密接に関わっていることがわかります。

タテクリカエシ

高知県幡多郡に伝わるタテクリカエシは、夜道を歩く人々に遭遇する妖怪です。この妖怪は、手杵のような形をしたものが音を立てながら道を転がってくる様子が特徴で、対面することで人を転倒させようとします。タテクリカエシは、猪のように急な方向転換ができないため、遭遇した際は脇に避けることが有効とされています。ただし、妖怪の伝承は地域によって異なり、昭和・平成以降の文献では、新潟県の妖怪と誤解されることが多くあります。この誤解は、書籍『民間伝承』において新潟の人物がこの妖怪の伝承を寄稿したことが一因です。しかし、正しくは高知県にその起源があるのです。同県の他の地域でも、「手杵返し」や「タテクリカエシ」に関連する怪異が報告されており、非常に興味深い存在です。

鑵子転ばし

福島県に伝わる鑵子転ばしは、山の中で夜道を通る人を狙う妖怪です。この妖怪は、湯沸しの器である鑵子を転がして人々に驚きを与えます。山口県においては、鑵子が転がる現象が「鑵子転げ」として伝えられ、人々が驚くと足の力が抜けてしまうという話もあります。また、理論的には器物ではなく人の生首が転がってくるという恐ろしいバリエーションも存在し、人々の想像力をかきたてています。

まとめ

転バシの妖怪たちは、各地域の伝承や、人々の恐れを取り込んだ時代の象徴でもあります。言い伝えは異なるものの、共通して人間に転倒をもたらす存在として、不気味さを感じさせる要素が含まれています。

それぞれの妖怪には、地域特有の文化や風習が息づいており、興味深い研究対象と言えるでしょう。日本の妖怪は、文化や精神性を教えてくれる貴重な存在であり、多くの人々の心に残り続けるでしょう。

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