輝く朝に 〜ABRAXAS〜

『輝く朝に 〜ABRAXAS〜』（かがやくあさに アブラクサス）は、日本のフォークデュオである、ふきのとうが発表した通算28枚目のシングル盤です。このシングルは、彼らのキャリアの中でもいくつかの点で特異な位置づけを持っています。

本作は、前作シングル『何故 愛は…/緑輝く日々』からおよそ4年という長い期間を経てリリースされました。これは、それまでのコンスタントなリリースペースと比較すると異例ともいえる間隔でした。また、このシングルは、同年リリースされたふきのとうのオリジナルアルバム『Heartstrings』に先駆けて発表された先行シングルでもありました。レーベルに関しても特筆すべき点があり、ふきのとうがそれまでに所属していたCBS・ソニーから、このシングルのみSony Recordsからの発売となっています。

『輝く朝に 〜ABRAXAS〜』の最も大きな特徴は、ふきのとうの楽曲の中で唯一、商業的なタイアップが付いた作品であるという点です。表題曲である「輝く朝に 〜ABRAXAS〜」は、読売テレビが制作し、日本テレビ系列で放送されたテレビドラマ『花友禅』の主題歌として採用されました。フォークグループとしての独自のスタンスを貫いてきたふきのとうにとって、全国ネットの連続テレビドラマ主題歌という形で楽曲が使用されたのは、その長い活動の歴史を見てもこの一曲のみであり、グループのディスコグラフィにおける重要な出来事として記憶されています。

このシングルはまた、ふきのとうの活動の最終章を飾る作品となりました。本作が事実上、ふきのとうとして最後に発表されたシングル盤となり、このリリースの翌年、1992年5月8日に北海道厚生年金会館にて行われたコンサートツアー『ever last concert 〜いつか、この空の下で〜』の最終公演をもって、ふきのとうは約20年間の活動に終止符を打ち、解散しました。したがって、『輝く朝に 〜ABRAXAS〜』は、解散を控えた彼らの音楽的表現の一端を示す、貴重な作品と言えるでしょう。

シングルには、「輝く朝に 〜ABRAXAS〜」とカップリング曲「Daisy」の2曲が収録されています。表題曲「輝く朝に 〜ABRAXAS〜」は、作詞・作曲をメンバーの細坪基佳が担当し、編曲は鈴木智文が手掛けました。演奏時間は4分45秒です。一方、カップリングに収められた「Daisy」は、作詞・作曲をもう一人のメンバーである山木康世が担当し、こちらも編曲は鈴木智文が手掛けています。演奏時間は3分11秒です。ふきのとうを支えた二人のメインソングライターによる楽曲が収められており、グループの音楽性を象徴する一枚ともいえます。

約4年ぶりのシングル、唯一のテレビドラマタイアップ、そして事実上最後のシングルという、多くの点でふきのとうのキャリアにおいて特別な意味合いを持つ作品として、『輝く朝に 〜ABRAXAS〜』はファンにとって記憶に残る一枚となっています。

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