轟B式土器

轟B式土器：縄文前期の文化を彩る土器

轟B式土器は、今から約6000年前の縄文時代前期に、九州地方を中心に、中国地方西部、山陰地方、そして朝鮮半島南岸にまで分布していた土器です。この土器の名称は、熊本県宇土市にある轟貝塚で発見されたものが標式土器として指定されていることに由来します。

轟B式土器の特徴

轟B式土器は、基本的に深鉢型をしています。器面には、バイガイなどのアルカ属二枚貝を使って条痕調整が施されており、外面の上部には細い粘土紐が数本貼り付けられているのが特徴です。この独特な文様や形状は、当時の人々の生活や文化、そして精神性を反映していると考えられています。

形状: 深鉢型が基本
調整: アルカ属二枚貝による条痕調整
装飾: 外面上部に細い粘土紐を貼り付け

轟B式土器の担い手と文化交流

轟B式土器の作り手は、南方性海洋民族（南島系海人族）であるという説があります。彼らは、高度な航海技術を持ち、海を介して様々な地域と交流していたと考えられています。また、轟B式土器は、朝鮮半島の櫛目文土器の担い手との接触があったことを示唆しており、その影響を受けて曽畑式土器が生まれたという説も存在します。さらに、ほぼ同時期に朝鮮半島に分布した新石器時代早期の土器（隆起文系）とも類似した特徴を持っていることから、当時の人々の広範な交流があったことが伺えます。

轟B式土器からわかること

轟B式土器は、縄文時代前期における人々の交流や文化の伝播を考える上で非常に重要な資料です。九州地方を中心に広範囲に分布していること、南方系の海洋民族との関連が考えられること、朝鮮半島の土器との類似性が見られることなどから、当時の人々が活発な交流を行っていたことがわかります。また、土器の文様や形状からは、当時の人々の精神性や美意識を垣間見ることができます。

轟B式土器の研究は、日本の古代史を解き明かす上で、今後も重要な役割を担っていくでしょう。

参考文献
李相均「縄文前期前半期における轟B式土器群の様相 : 九州山陰地方韓国南岸を中心に」『東京大学文学部考古学研究室研究紀要』第12巻、東京大学文学部考古学研究室、1994年3月、113-167頁
水ノ江和同「「轟B式土器」に関する3篇の論文」『考古学研究』第38巻第4号、考古学研究会、1992年3月、114-122頁
轟Ｂ式土器（縄文土器） 山口県立博物館

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