轢き逃げ 最高の最悪な日

『轢き逃げ 最高の最悪な日』は、2019年公開の日本映画で、水谷豊が監督・脚本を務めた作品です。主演は中山麻聖と石田法嗣が務め、水谷豊にとっては監督2作目であり、初の脚本作品となりました。また、日本映画として初めてドルビーシネマ規格で公開された作品でもあります。

物語は、結婚式を間近に控えた宗方秀一が、親友の森田輝と共に車で移動中、誤って女性を轢いてしまうところから始まります。動揺した二人は、誰にも見られていないと判断し、その場から逃走。しかし、轢き逃げ事件はすぐに報道され、被害者の女性は亡くなってしまいます。秀一は大手建設会社に勤務するエリート社員で、婚約者の白河早苗は副社長の娘という立場。社内では専務派閥から妬まれ、風当たりが強い状況でした。

そんな中、秀一と輝の自宅には、動物の目を切り抜いた脅迫状が届き、二人は目撃者がいることを悟ります。結婚式前日、気分転換のために遊園地へ出かけますが、結婚式当日には、匿名の祝辞で遊園地に行ったことが暴露されるなど、監視されている恐怖に怯える日々を送ります。新婚初夜の翌日、秀一は轢き逃げ犯として逮捕され、輝も犯人隠避の罪で逮捕されてしまいます。

一方、被害者の時山望の両親は、突然の娘の死に打ちひしがれていました。逮捕の連絡が入ったものの、秀一の婚約者である早苗やその父親である副社長が謝罪に訪れても、受け入れることができませんでした。その後、刑事から望の遺品が返却された際、事故現場に携帯電話が無かったことを知らされ、自宅を探すと望の日記が見つかります。そこには、事故前に携帯を紛失し、当日誰かと喫茶店で待ち合わせをしていたことが記されていました。

疑問を抱いた父親の光央は、独自に調査を開始。輝は弁護士のすすめで釈放されますが、光央に声をかけられ、思わず逃走します。しかし、光央に被害者の父親だと明かされると、土下座して謝罪します。その様子を見ていた刑事が、光央に日記の存在を伝え、捜査が進展していきます。早苗は逮捕された秀一のために拘置所に通い続け、手紙を書き、待ち続けることを決意していました。輝も早苗に謝罪しますが、早苗はもう謝罪をやめるよう告げ、秀一の写真を毎日見ていると話します。

光央は聞き込みを進める中で、望が合コンに参加していたことを突き止めます。参加者から、キャップに白いジーンズの男が望に近づいていたこと、そしてその男の顔が映った動画を入手します。その男に見覚えのあった光央は、男の家へ侵入。そこには、動画に映っていた帽子とジーンズ、そして目だけを切り抜いた図鑑、画面が割れた望の携帯電話がありました。犯人はなんと、秀一の親友である輝でした。

輝は、合コンで知り合った望を喫茶店に誘い出し、携帯電話を盗み、事故現場に立っているよう仕組んでいました。さらに、秀一をナビで誘導し、事故を起こさせたのです。輝は秀一への嫉妬心から計画を立て、被害者の生死はどうでもいいと考えていました。警察の取り調べで、輝は全てを自供します。一方、被害者の母千鶴子は、早苗をカフェに誘い、娘を見るような優しい笑顔で、早苗は悪くないと声をかけます。秀一からの手紙を読んだ千鶴子は、それでも秀一を待ちたいという早苗の気持ちを受け入れ、物語は幕を閉じます。

この映画は、轢き逃げ事件を軸に、人間の嫉妬心や心の闇、そして被害者と加害者の複雑な関係を描いた作品であり、衝撃的な展開と、水谷豊監督ならではの演出が際立つ作品です。

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