辛子蓮根

辛子蓮根とは

辛子蓮根は、熊本県を代表する郷土料理の一つです。その特徴は、蓮根の穴に和辛子を混ぜた味噌を詰め、小麦粉などをベースにした衣で揚げた、独特の風味と食感にあります。一般的に、唐辛子ではなく和辛子を使用します。

発祥と由来

辛子蓮根の起源は、江戸時代にまで遡ると言われています。病弱だった熊本藩主、細川忠利が、前任地の禅僧から蓮根を勧められたことがきっかけで誕生したという説が有力です。藩の賄方であった平五郎が、蓮根の穴に辛子味噌を詰め、揚げて献上したところ、大変気に入られたとされています。また、輪切りにした際の断面が細川家の家紋に似ていたことから、門外不出の料理になったという逸話も残っています。

蓮根は増血作用に優れ、辛子は食欲増進効果があるため、辛子蓮根は健康食としても重宝されてきました。もともとは家庭料理として親しまれていましたが、現在では専門店も登場し、熊本を代表する名産品として広く知られています。

辛子蓮根の作り方

辛子蓮根の基本的な作り方は以下の通りです。

1. 蓮根の穴に、和辛子を混ぜた味噌を隙間なく詰めます。
家庭では、バットなどに辛子味噌を山盛りにし、蓮根を押し付ける方法が簡単です。
製造業者は、50cmほどの高さに辛子味噌を盛り、蓮根を押し付けて詰めます。
2. 辛子味噌を詰めた蓮根を5時間以上寝かせます。
3. 小麦粉、ターメリック、水を混ぜて作った衣を、蓮根に満遍なくつけます。
4. 180℃の中温の油で揚げます。菜種油を使うことで、ターメリックとの相乗効果で黄色く発色します。
5. 揚げ終わったら、適度な厚さに輪切りにして完成です。

バリエーション

近年では、辛子の代わりに明太子を使った「明太子蓮根」や「辛子めんこん」といったバリエーションも登場しています。これらの商品は主に福岡県で販売されています。

食中毒事件

1984年、辛子蓮根の製造業者である株式会社三香が製造した真空パックの辛子蓮根によるボツリヌス菌の集団食中毒事件が発生しました。この事件では36名が中毒症状を起こし、11名が亡くなりました。調査の結果、工場で使用していた生からし粉からボツリヌス菌の毒素が検出され、真空包装後の冷蔵環境が菌の増殖を促したことが原因とされています。

この事件により、辛子蓮根業界は大きな打撃を受け、多くの業者が廃業に追い込まれました。事件後、熊本県辛子蓮根協同組合が発足し、自主基準として真空パック商品の製造を禁止しましたが、非加盟業者による真空パック商品は現在も販売されています。

その他の情報

辛子蓮根は、スナック菓子としても販売されています。「からしれんこんチップス」は、油で揚げた辛子蓮根を手軽に楽しめる商品として人気です。

まとめ

辛子蓮根は、熊本の豊かな食文化を象徴する料理の一つです。その歴史、製法、そして過去の教訓を胸に、これからも熊本の味として受け継がれていくでしょう。

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