辰野勇

辰野勇：冒険家、登山家、そしてモンベル創業者

辰野勇（1947年生まれ）は、日本の登山家、冒険家、カヌーイストであり、株式会社モンベルの創業者であり会長を務めています。彼の人生は、山への情熱、冒険、そして革新的なビジネスの追求によって彩られています。

若き日の情熱と挑戦

大阪府堺市で生まれた辰野は、中学時代から岩壁登攀を始め、1967年には前穂高岳の屏風岩を登頂しました。ハインリッヒ・ハラーの『白い蜘蛛』に感銘を受け、青春時代を登山に捧げました。高校卒業後、スポーツ用品店に勤務しますが、ロッククライミングへの反対から休職し、1969年には中谷三次と共にアイガー北壁に挑み、当時の世界最年少登頂を成し遂げました。1970年には、日本初のクライミングスクールを開設し、登山界の発展に貢献しました。

モンベル創業と革新的な製品開発

モンベル創業前、辰野は登山用具店「白馬堂」で営業社員として働いていました。しかし、冬の登攀中のビバークで粗悪な手袋による凍傷を経験し、高機能で安全性の高い装備の必要性を痛感します。この経験が、1975年のモンベル創業へと繋がりました。モンベルは、辰野自身の経験に基づいた、高品質で革新的なアウトドア用品を提供し、登山家やアウトドア愛好家から支持を集めています。

カヌー、カヤックへの情熱と社会貢献

辰野は、登山だけでなく、カヌーやカヤックにも熱中し、第3回関西ワイルドウォーター大会で優勝。黒部川を源流から河口までカヤックで初下降したほか、グランドキャニオン、ユーコン、コスタリカ、ネパールなど、世界中の河川を制覇しました。1991年には、日本初の身体障害者カヌー大会「パラマウント・チャレンジカヌー」を開催するなど、社会活動にも積極的に参加しています。

多岐にわたる活動と社会への貢献

びわこ成蹊スポーツ大学や天理大学で客員教授を務める傍ら、2011年の東日本大震災では「アウトドア義援隊」を組織し、アウトドア体験を活かした災害支援活動を自ら指揮しました。「M.O.C.（モンベル・アウトドア・チャレンジ）」の校長や「大阪府カヌー協会」副会長も務め、徳島県では川の学校の講師として、次世代の育成にも力を注いでいます。

受賞歴とメディア出演

辰野勇は、数々の賞を受賞しています。関西ニュービジネス協議会・起業家大賞（1994年）、日本ニュービジネス大賞通商産業大臣賞（1995年）、イタリア山岳会・2000年記念賞（1999年）、第1回デザインエクセレントカンパニー賞（2005年）、環境省「グッドライフアワード」（2015年、2016年）など、その功績は広く認められています。

また、NHK総合『課外授業 ようこそ先輩』、テレビ東京『日経スペシャル カンブリア宮殿』、NHK BSプレミアム『世界の名峰グレートサミッツ』など、数多くのテレビ番組にも出演し、自身の経験や哲学を語っています。

著書

辰野勇は、数多くの著書を執筆しています。

『カヌー・エンジョイ・マニュアル カヤック入門編 新版』(1989年)
『社長室はアウトドア 岩登りからカヤックへ。万年青年の冒険』(1992年)
『カヌー&カヤック入門 遊び方はいろいろ Outdoor A to Z アウトドアのすべてがわかる 4』(1999年)
『服装・装備術 地球元気村遊びテキスト 5』(2001年)
『カヌー＆カヤック入門 : 川・海・静水別、基本＆実践テクニック集 Outdoor books 6』(2005年)
『カヌー&カヤック入門 川・湖・海でのパドリング術をフィールド別に徹底紹介』(2013年)
『モンベル7つの決断 アウトドアビジネスの舞台裏』(2014年)
『軌跡 mont-bell BOOKS』(2014年)
『辰野勇 モンベルの原点、山の美学 のこす言葉』(2020年)
『自然に生きる力 24時間の自然を満喫する』(2020年)

これらの著書を通じて、アウトドアの魅力や、自然との共生の大切さを伝えています。

辰野勇の人生は、冒険と挑戦、そして社会貢献への情熱に満ち溢れています。彼の足跡は、多くの人々に勇気とインスピレーションを与え続けています。

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