辻本裕

辻本 裕（つじもと ゆたか）氏は、1975年7月24日生まれ、大阪府出身の元ラグビー選手であり、指導者としても活動した人物です。現役時代のポジションはフォワードの最前列中央に位置するフッカー（HO）。「Bull」あるいは「ブル」というニックネームで親しまれ、チームメイトや後輩からは「ブルさん」と呼ばれ慕われました。

辻本氏のラグビーキャリアは、大阪工業大学高等学校で輝かしい成績と共に始まりました。1991年度から連続して全国高校ラグビーフットボール大会に出場し、初年度にはチームのベスト4進出に貢献。その後もベスト16、ベスト8という成績を残しました。特に1993年度には、その活躍が認められ、高校日本代表に選出。ラグビー強豪国であるニュージーランドへの海外遠征も経験しています。

高校卒業後、1994年には龍谷大学に進学しました。大学ラグビー部でも中心選手として活躍し、関西大学ラグビーフットボールリーグでは、在学中に複数回上位に食い込む原動力となりました。全国大学ラグビーフットボール選手権大会にも毎年出場し、3年連続でチームをベスト16に導くなど、大学レベルでもその実力を示しました。

1998年には近畿日本鉄道に入社し、同社のラグビー部である近鉄ライナーズに入団しました。社会人ラグビーの舞台でもすぐに頭角を現し、全国社会人ラグビーフットボール大会ではベスト8進出を複数回経験するなど、近鉄のフォワード陣を牽引する存在となります。2001年度にはチームの副キャプテンを務め、リーダーシップを発揮しました。2003年度に日本のトップリーグが創設されてからも、近鉄ライナーズの選手として第一線でプレーを続けましたが、チームは苦しい時期を過ごし、2004年度シーズン終了後にはトップウェストへの降格という結果に直面しました。

チームの再建が急務となる中、辻本氏はさらなる重責を担います。2005年度および2006年度の2シーズン、チームのキャプテンに就任。リーダーとしてチームを鼓舞し、両年度ともにトップウェストでの優勝を果たしました。しかし、トップリーグ復帰をかけた入替戦では惜敗が続き、なかなか昇格を果たすことはできませんでした。

転機が訪れたのは2007年度です。このシーズン、辻本氏は選手としての活動に加え、コーチを兼任する形でチームに貢献することを選択しました。選手としての出場機会は限られたものの、指導者としての視点も持ち合わせ、チームを勝利に導くための戦略立案や選手への助言を行いました。その結果、チームは再びトップウェストで優勝を飾り、さらにトップリーグ昇格をかけたトップチャレンジも制覇。見事に近鉄ライナーズをトップリーグの舞台へと引き戻しました。この年度には、昇格チームとして日本選手権にも出場しています。

国際経験としては、2001年に日本代表に関連する複数の試合に出場しています。3月に行われた日本代表セレクションマッチや、4月の日本A代表対ニュージーランド大学代表戦、5月の日本代表対韓国代表戦など、日の丸を背負う機会を得ました。また、ラグビーのスキル向上と知見を広げるため、2003年と2004年にはニュージーランドへ留学し、現地のワイテマタR.F.C.でプレーした経験も、その後のキャリアに活かされました。

長年にわたりラグビーに情熱を注いだ辻本裕氏は、2008年3月をもって現役選手としての活動に終止符を打ちました。引退後は近畿日本鉄道の社員として社業に専念しています。トップリーグにおいては通算18試合に出場し、5得点（1トライ）を記録しています。選手として、そして指導者として、近鉄ライナーズの歴史にその名を刻んだ人物です。

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