辻村寿三郎

辻村 寿三郎 - 日本の人形作家

辻村寿三郎（つじむらじゅさぶろう）は、1933年に旧満洲国錦州省で生まれた日本の人形作家で、人形操作師およびアートディレクターとして広く知られています。彼は、物心ついた頃から人形作りに没頭し、その才覚を大いに発揮することになります。1944年、11歳で日本に引き揚げた彼は、広島に住むことになりましたが、原爆投下の危機から逃れることができました。その後、三次市で育った彼は、創作活動に対する情熱を育んでいくことになります。

若い頃とキャリアの始まり

辻村は、戦後の三次中学を卒業後、裁縫士を目指して洋服屋に奉公しますが、間もなく舞台芸術への興味を掻き立てられ、演劇サークルに所属しながらさらなる経験を重ねました。1954年、母の死をきっかけに役者を志して上京し、劇団人形座に参加しました。後に小道具制作の藤浪小道具に就職し、創作人形への道を歩み始めました。

1959年には独立し、幼い頃からの趣味である人形制作に本格的に取り組みます。1961年には第13回現代人形美術展で入選し、その後も同展で特選や佳作を受賞するなど、人形作家としての地位を確立しました。また、1963年にNHK『みんなのうた』でアニメーション用の人形を制作し、その後も多くのテレビ番組や舞台で人形美術を担当します。

主要な業績と受賞歴

辻村は、人形制作だけでなく、アートディレクションや舞台衣裳デザインなどさまざまな分野で活躍しました。特に1973年のNHK『新八犬伝』では300体以上の人形を制作し、一躍人気作家となりました。また、数々の受賞歴があり、1975年にはモービル児童文化賞、1977年には芸術選奨文部大臣新人賞を受賞するなど、その彼の業績は高く評価されました。

1980年以降も、映画や舞台で衣裳デザインを手掛けるほか、アートディレクターとしての新たな領域を切り拓きました。特に蜷川幸雄とのコラボレーションが印象的であり、彼の手がけた作品は数多くの舞台で人々を魅了しました。

ジュサブロー館とその役割

辻村は1996年に東京日本橋人形町に自身の人形館「ジュサブロー館」を開館し、その後も一般の人々との交流を深めました。ここでは、様々な作品の展示が行われ、彼のアトリエも公開されていました。しかし、2015年に閉館し、現在は三次市にある辻村寿三郎人形館に作品が収蔵されています。

九州とのゆかり

辻村は九州との縁も深く、行橋市での人形教室を通じて多くの人々に人形制作の楽しさを伝えていました。この教室は全国初の試みで、遠方から通う生徒も多く、彼の指導を受けることができる貴重な機会となっています。特に2005年には行橋市のイベントに参加し、人形操作を披露したことで現地の人々の心をつかみました。

逝去とその後

2023年2月5日、辻村は心不全により89歳で亡くなりました。彼の死は多くの人々に惜しまれ、人形作家としての遺した功績は今後も語り継がれていくことでしょう。弟子の川崎員奥が二代目辻村寿三郎を襲名し、彼の精神を受け継いで活動を続けています。

辻村寿三郎は、ただの人形作家ではなく、アート全体に深く関与したアーティストとしての地位を確立しました。彼の業績と影響力は、日本の伝統文化を次世代へとつなぐ重要な役割を果たし続けています。

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