辻説法

辻説法とは

辻説法とは、人が多く集まる場所、例えば町角や道端、寺社の境内などで、人々に対して行われる説法や講義のことです。辻能、辻放下、辻狂言、辻談義、辻咄、辻講釈、軽口物真似なども、この辻説法の一種と見なされます。現代においては、街頭で行われる政治活動などの演説も辻説法と呼ばれることがあります。

歴史

ヨーロッパの古代においては、ソクラテスが体育館への行き帰りの若者を引き留めて議論を交わしたという逸話が残っています。しかし、日本においては、古代・中世には「辻説法」という言葉自体が見られません。僧侶の伝記絵巻などには屋内での説法の様子が描かれていますが、屋外で説法を行う様子は確認されていません。

近世になると、『信長公記』や仮名草子、近松門左衛門の作品などに辻談義や辻談義僧が登場します。彼らは道行く人に説法を行い、その対価として金銭を受け取っていました。このことから、辻説法が芸能化していく傾向が見て取れます。

日蓮の辻説法

日蓮の辻説法は特に有名であり、神奈川県鎌倉市の小町大路には、辻説法跡の記念碑が2箇所に建てられています。しかし、これらの記念碑が示す事実については確認されておらず、16世紀に作られた日蓮の伝絵にも、辻説法の場面は描かれていません。

辻説法の多様性

辻説法は、単なる宗教的な説法にとどまらず、芸能や政治活動など、多様な形態を取りました。人々に直接語りかけるという点で、辻説法は社会との接点を持つ重要な文化現象であったと言えるでしょう。

現代においても、街頭演説やパフォーマンスなど、辻説法の精神を受け継ぐ活動は存在します。人々が集まる場所で、何かを伝えようとする行為は、時代を超えて形を変えながら受け継がれていくのです。

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