近危急種

近危急種（Near Threatened, NT）とは

近危急種とは、国際自然保護連合（IUCN）が作成するレッドリストにおいて、生物種の保全状況を評価するカテゴリーの一つです。英語では「Near Threatened」と表記され、略称は「NT」です。

このカテゴリーは、現時点では絶滅の危険性は低いものの、生息地の変化やその他の要因によって、将来的に絶滅危惧種（VU）に移行する可能性が高いと判断された種を対象としています。つまり、近危急種は、低危険種（LC）よりも絶滅リスクが高いものの、絶滅危惧種には至っていないという中間的な位置づけとなります。

IUCNは、近危急種に分類された生物については、その保全状況を頻繁に、または定期的に再評価することが重要であるとしています。これは、環境の変化や個体数の変動によって、状況が迅速に変化する可能性があるためです。

分類と評価

2017年現在、IUCNレッドリストでは5,736分類群が近危急種と評価されており、その内訳は動物が3,865分類群、植物が1,867分類群、菌類が4分類群となっています。この数値は、世界中の生物多様性の状況を把握する上で重要な指標となります。

また、かつて「保全対策依存（CD）」というカテゴリーに分類されていた402分類群も、2001年のカテゴリー改定に伴い、近危急種として扱われるようになりました。

略称と表記

2001年に公開されたIUCNレッドリスト（ver. 3.1）以降、近危急種は「NT」と略されるようになりました。しかし、それ以前のバージョンでは、「低リスク（Lower Risk）」というカテゴリーのサブカテゴリーであったため、IUCNのデータベースでは「LR/nt」と表記されることもあります。

2000年以前に近危急種と評価され、2001年以降に再評価されていない種については、「LR/nt」または「(nt)」と記載されている場合があります。

各国のレッドリスト

近危急種というカテゴリーは、IUCNだけでなく、各国のレッドリストでも採用されています。例えば、日本の環境省が作成したレッドデータブックおよびレッドリストでは、2007年現在、665の分類群（動物475、植物190）が準絶滅危惧に指定されています。

このように、近危急種という概念は、国際的にも国内的にも、生物多様性の保全において重要な役割を担っています。保全対策を進めるためには、これらの種に対する継続的な調査とモニタリングが不可欠です。

まとめ

近危急種は、絶滅危惧種に次いで、保護の優先度が高いカテゴリーです。その定義と現状を理解することで、生物多様性保全への意識を高め、適切な対策を講じていく必要があります。

もう一度検索