近鉄東信貴鋼索線

東信貴鋼索線：歴史に幕を閉じた信貴山へのケーブルカー

東信貴鋼索線は、かつて奈良県生駒郡三郷町の信貴山下駅から信貴山駅を結んでいた近畿日本鉄道（近鉄）の鋼索鉄道、いわゆるケーブルカー路線です。全長1.7kmの路線は、最大217‰という急勾配を克服し、信貴山朝護孫子寺への参拝客や地域住民の足として利用されていました。

路線データ

路線距離: 1.7km
方式: 単線2両交走式
軌間: 1067mm
駅数: 2駅（信貴山下駅、信貴山駅）
最大勾配: 217‰（約12°14′）
平均勾配: 125‰

概要

東信貴鋼索線の歴史は、生駒線の前身である信貴生駒電気鉄道が、関西本線王寺駅から信貴山へのルートを確立するために開業したことに始まります。しかし、大阪電気軌道（大軌）とその子会社である信貴山急行電鉄が、現在の信貴線・西信貴鋼索線を開業させると、大阪市からのアクセスはそちらが便利になったため、東信貴鋼索線の利用者は減少していきました。

近鉄に統合された後も、細々と輸送を続けていましたが、周辺地域が大阪市のベッドタウンとして住宅化されると、路線が道路整備の妨げとなり、さらに乗客が減少。1983年に全線が廃止されることとなりました。

廃止時の運賃は大人片道350円でした。

運行形態（1983年当時）

運行本数: 終日約20分間隔、1日42往復
所要時間: 10分

車両

コ9形

車両形式: コ9形
車両番号: 9（赤色塗装）、10（青色塗装）
最大寸法: 長さ10,380mm×幅2,405mm×高さ4,075mm
定員: 116名（座席28名、クロスシートとロングシートが半々）
自重: 10.0トン
制動装置: 自動及び手用制動機
集電装置: パンタグラフ2個
勾配: 1:8
製造年: 1933年（昭和8年）
製造所: 藤永田造船所

歴史

1922年（大正11年）5月16日：信貴生駒電気鉄道により、山下（後の信貴山下） - 信貴山間が開業。
1964年（昭和39年）10月1日：近畿日本鉄道（近鉄）に合併され、同社の東信貴鋼索線となる。
* 1983年（昭和58年）9月1日：全線廃止。

駅一覧

全駅が奈良県生駒郡三郷町に所在しています。

輸送実績

1935年以前のデータは鉄道線と合算、近鉄合併後は鋼索線合算のため省略されています。

廃止後

路線の多くは道路用地に転用されました。麓側の約700mは道路拡幅に、その山側の約200mは信貴ケ丘高等学校（現・西和清陵高等学校）の敷地の一部となりました。山側の約800mは遊歩道として整備され、枕木などが残されています。

信貴山下駅の鋼索線ホームは駅舎改築の際に撤去され、信貴山駅の駅舎と駅前広場はバス待合所・発着所に転用されています。

代替交通

奈良交通が王寺駅 - 信貴山下駅 - 信貴山 - 信貴山門間でバスを運行しており、JR大和路線・和歌山線や近鉄田原本線との連絡が可能です。

保存車両

廃止された車両のうち、車両番号9は三郷町立三郷北小学校に譲渡され保存されていましたが、2020年に信貴山下駅前に移設され、一般公開されています。車両番号10は解体されましたが、車輪などの部品が信貴山下駅構内に展示されています。

近鉄生駒線・旧東信貴鋼索線開業100周年

2022年（令和4年）には近鉄生駒線・旧東信貴鋼索線開業100周年を迎え、記念式典が開催されました。

まとめ

東信貴鋼索線は、信貴山へのアクセスを支えた重要な路線でしたが、時代の変化とともにその役割を終えました。しかし、その歴史は今もなお、地域の人々に語り継がれています。

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