逃亡奴隷法

逃亡奴隷法についての詳細

逃亡奴隷法（Fugitive Slave Laws）は、アメリカ合衆国における奴隷制度を支えるために策定された法律で、特に1793年と1850年に制定されました。これらの法は、一州から他の州へ法的手続きを経ずに逃亡した奴隷の返還を義務づけるものであり、憲法にもその要素が反映されています。この法律は、その成立から南北戦争にかけて、州ごとの反応や法律の適用の仕方に関して多くの議論を生みました。

植民地時代の背景

逃亡奴隷法の根源は、植民地時代にさかのぼります。1643年のニューイングランド連邦の連邦規約では、逃亡奴隷を返還するためのルールが初めて定められました。ただ、この時代には各植民地ごとに異なる取り扱いがあり、明確な方法が求められるようになったのは、反奴隷制への反応が高まる中でのことでした。

1787年に制定された北西部条例は、逃亡奴隷が北西部領土に入った場合に、その者が元の州に返還されることを明記し、連邦憲法の中には逃亡奴隷条項が組み込まれることとなりました。この条項では、州の法律が逃亡奴隷の権利に干渉することを禁止し、元の州にいた人が逃亡者を請求できるという規定がありました。

1793年法の制定

1793年に成立した逃亡奴隷法は、法制化された最初の具体的な法律です。この法律は、逃亡者の身柄を陪審なしで判決できる権限を連邦地区や州の裁判官に与えました。しかし、この法律はすぐに北部州の強い反発を招き、逃亡者を保護するための「個人的自由法」が制定されました。また、一部の州では逃亡者が不利な判決を受けた場合の上訴を許可するなど、法律の運用に改変が試みられました。

1850年法の厳しさ

1850年には、さらに厳しい逃亡奴隷法が制定され、南部州からの要望に応えた形で成立しました。この法では特別なコミッショナーが設置され、逃亡者には証言を認めず、陪審裁判もなかったため、不公平な扱いがさらに悪化しました。逃亡者を保護する役割を果たした者は厳罰に処され、コミッショナーが原告勝訴の場合に高額の手数料を受け取る一方で、逃亡者勝訴の場合には低額の手数料しか得られない仕組みがありました。これにより、法律は不正利用されることが多く、奴隷制度廃止運動も活発化しました。

南北戦争との関連

南北戦争が始まると、この逃亡奴隷法の適用状況は変化しました。1861年の押収法や奴隷返還禁止法などが制定され、次第に逃亡奴隷に対する扱いが緩和されていきました。これにより、北軍占領地域では逃亡者が解放されることとなりましたが、依然として境界州では法律が有効であり続けました。最終的に1850年の逃亡奴隷法は1864年に撤廃され、奴隷制度に対する法律の見直しが進められることとなりました。

逃亡奴隷法はアメリカ合衆国の歴史における重要な側面であり、奴隷制度に対する社会の反応や法的手続きの変遷を理解するための鍵となっています。

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