逃走星

逃走星とは

逃走星（とうそうせい）は、英語で「a runaway star」と呼ばれる天体であり、年齢が若いにもかかわらず、天の川銀河の旋回に比べて非常に高い速度で宇宙を移動する星を指します。これらの星は何らかの理由で元々所属していた星団や連星系からはじき出されたと考えられており、別名として逃亡星や暴走星が用いられることもあります。

逃走星のメカニズム

逃走星が高速で運動するメカニズムには主に2つのシナリオが提唱されています:

1. Binary-supernova scenario (BSS)

連星系において、主星が超新星として爆発することで他の恒星が激しい速度で星系から打ち出される現象です。具体的には、超新星の衝撃波が伴星を通り過ぎる際、主星の重力の影響は減少し、伴星はその公転速度と同程度の速度（30〜150 km/s）で星系の外に放り出されます。この場合、連星系に所属していた星が一気に逃げ出すことになるのです。

2. Dynamical ejection scenario (DES)

こちらは、密集した星団内での重力相互作用により発生します。近接する連星系が互いに接近し合うことで重力が作用し、1つまたは複数の恒星が星系の境界を超えて弾き出されるケースです。この結果、しばしば2つの逃走星と残された近接連星系が存在することになります。

実例

具体的な逃走星の例として、はと座μ星（μ Col）とぎょしゃ座AE星（AE Aur）が挙げられます。これらの星はほぼ反対方向に向かい、約100 km/sという驚異的な速度で遠ざかっています。こうした恒星の動きを遡ると、オリオン座のι星（ι Ori）の近くで交差する過去の事象が示唆されます。つまり、これらの星はかつて同じ星系に属していたと考えられており、その背景には約250万年前にμ Colとι Ori B、AE Aurとι Ori Aという連星系が接近し、重力相互作用を起こしたことが影響を与えています。この相互作用により、μ ColとAE Aurが打ち出され、オリオン座のι星AとBが現在の位置に残るという説が有力視されています。

逃走星は、その独特な運動と起源から天文学者にとって興味深い研究対象であり、宇宙の成り立ちや星の進化に関する重要な手がかりを提供してくれます。

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