通州事件

通州事件（つうしゅうじけん）

通州事件は、1937年7月29日、中華民国河北省通州において発生した日本人に対する大規模な襲撃事件であり、通州特務機関、警察、居留民が襲撃され、200人以上が虐殺されました。この事件は「通州虐殺事件」とも呼ばれています。

背景

通州は北京から東へ約30キロメートルに位置する都市で、当時は冀東防共自治政府の中心地でした。この政府は日本の政治動向によるもので、殷汝耕を指導者とし、南京政府から離脱した形で設立されました。事件の約3週間前に発生した盧溝橋事件以来、日中間の緊張は高まっており、通州に駐留していた日本軍は警戒態勢を強化していました。

冀東防共自治政府の保安隊は、満洲からの逃避者や元軍人を中心に構成されており、彼らの中には反日感情を抱く者も少なくありませんでした。このため、保安隊の戦力は、日本軍の支配下にあるかのように見えていましたが、内情では緊張が高まっていました。

日本軍の受け入れ

事件当時、通州を守備していた日本軍の主力は南苑の攻撃に出動中であり、通州には戦闘能力の低い小部隊しか残っていませんでした。日本軍は冀東防共自治政府の保安隊を友軍扱いし、襲撃の兆候に気付いていませんでした。この誤認が結果的に惨劇を招く要因となります。

事件の発生

1937年7月29日午前2時、冀東防共自治政府の保安隊が日本軍の拠点や居留民を襲撃しました。この襲撃は特に計画的であり、先に生じた誤爆事件に対する復讐とも見られています。保安隊は強武装で、事後報告により、襲撃によって多くの日本人・朝鮮人居留民が無惨に殺害され、223人が虐殺されたとされています。

襲撃時、守備隊は無防備で現場に居たため、強力な攻撃に対しほとんど抵抗ができず、短時間で絶望的な事態に陥りました。このような状況下での日本軍と冀東防共自治政府の意識の乖離が、事件の悲惨さを増す要因となりました。

事件後の影響

通州事件は日本国内外で大きな波紋を呼びました。この出来事が報じられると、国内では「暴虐支那を懲らしめろ」という世論が強まり、日本の対中感情の悪化が進みました。また、通州事件の後、日本軍はこれを対中戦政策の根拠として利用し、さらなる攻撃を強化していく結果となります。

事件の処理として、冀東政府は後に謝罪を行い、いくらかの賠償をおこなうことで収束を図りますが、その影響は長期にわたって日中関係を緊張させる要因となりました。

評価と諸説

通州事件には様々な原因や評価が存在しています。元々の保安隊メンバーに反日的な感情を持つ者が多かったこと、また誤爆事件が引き金になったという意見が挙げられています。さらに国民党との連携による計画的な反乱だったのか、単なる暴発だったのかについても議論され、今なおその真実は謎に包まれたままです。

このように、通州事件は日本と中国の歴史の中で重要な一幕を形成しており、双方の国にとって記憶され続けるべき事件です。再びこのような惨劇が起こることのないよう、歴史を深く学び理解することが求められています。

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