通過標識灯

通過標識灯（つうかひょうしきとう）

通過標識灯とは、鉄道において列車が駅を通過する際に点灯される白色灯のことです。これにより、停車する列車と通過する列車を区別しやすくなります。通常、回送列車や試運転中の列車、団体専用列車などもこの標識を使用します。この灯は「急行灯」や「列車識別灯」と称されることもあり、各鉄道事業者によりその名前や仕様も異なります。

通過標識灯は法律での設置義務はなく、各鉄道会社により任意で設置されることが一般的です。日本国内では、特に大都市近郊で運行している大手私鉄がこの装備を多く導入しており、特に近畿地方の鉄道会社が目立ちます。一方、旧日本国有鉄道（国鉄）やJRは多くの例外を除き、この灯を装備していないことが多いです。

この灯が白色であることから、鉄道に関わる専門家や趣味者以外の人々には、フォグランプと誤解される場合もありますが、実際には霧の中を走行するための装備ではなく、列車の識別のために用いられています。

起源と発展

通過標識灯の起源は、鉄道技術が発展したイギリスに遡ります。当時、各駅停車や急行列車、旅客列車、貨物列車などの種別が分かれてきました。しかし、通信手段が未発達であったため、ダイヤや時刻表を外れて走行する列車の識別は困難でした。これにより、蒸気機関車の前方に設置された白色円板や灯火によって列車の種別を示すことが始まりました。この慣習は次第に日本に導入され、現在の通過標識灯となりました。

日本の通過標識灯は、一般的に先頭車両の窓の近くに取り付けられ、後部標識灯と対称的に配置されることが多いです。また、両者の機能を統合したデザインも見受けられますが、それぞれの方向や色合いは異なります。特に、車両によっては、通過標識灯が前部に、後部標識灯が最後尾に設置されることが一般的です。

設置位置と形状

通過標識灯の取り付け位置は、後部標識灯と似ており、通常は左右対称に配置されます。また、近年ではLED技術の進化により、従来の白熱灯に代わってLEDによる標識灯が多くの鉄道会社で導入されています。特に近鉄や京阪では、デザインや形状にバリエーションが見られ、標識灯だけでなく、他の灯具との組み合わせでもさまざまな形状があります。

各鉄道事業者の実情

日本の鉄道事業者によって通過標識灯の使用方法は様々です。例として、関西地域では、同じ列車でも一方の灯を点灯させて種別を分けるケースが多く見られます。一方、関東地域では通過標識灯の使用があまり普及しておらず、昼間は点灯しない場合や、完全に廃止された事業者も多く存在します。

このように、通過標識灯は鉄道の安全運行やサービス向上に寄与してきた重要な設備ですが、その使用方法やデザインは各社で多様性があり、鉄道の特色を表現する要素ともなっています。今後も新技術やデザインの進化が期待される分野です。

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