造園芸術

造園芸術（ぞうえんぎじゅつ）

「造園芸術」（英：The Landscape Art）という言葉は、主に二つの異なる出版物を指す際に使用されます。一つは、日本の造園分野における学術団体がかつて刊行していた雑誌形態の機関誌であり、もう一つは、ある企業がその歴史的な節目を記念して発行した書籍です。これらは名称こそ共通していますが、その性質、発行の背景、内容、そして発行された時期において明確に区別されるべきものです。

日本造園学会機関誌としての「造園芸術」

概要

より一般的に「造園芸術」として言及されることが多いのは、社団法人日本造園学会が発行していた機関誌です。この雑誌は、学会の活動を反映し、当時の日本の造園学術界および実務界における研究成果、技術の進歩、そして議論の動向などを広く共有することを目的としていました。具体的には、国内外の優れた造園作品を選定し、その設計思想、技術的な側面、そして美的価値などを詳細に分析・解説する記事が多数掲載されていました。さらに、造園という分野が直面していた様々な課題や、将来的な展望について深く考察する評論記事や、実際の造園計画や設計に直接的に役立つ技術的な情報や参考となる資料などを集めた設計資料なども含まれており、当時の造園関係者にとって貴重な情報源としての役割を果たしていました。

発行経緯と状況

この日本造園学会の機関誌は、比較的短い期間に限定して刊行されました。その創刊号は、日本の元号で昭和5年にあたる1930年の2月に、記念すべき第1巻第1号として発行されました。その後、定期的な刊行が続けられましたが、その歴史は長くは続きませんでした。創刊からわずか1年後の1931年（昭和6年）2月に発行された第2巻第5号をもって、残念ながらこの雑誌の刊行は終了となりました。創刊号から最終号までの間に発行された総数は、記録によると全16冊です。この短い期間に発行されたこれらの冊子は、今となっては昭和初期の日本の造園学術や技術、そして当時の造園界の関心事を伝える貴重な史料となっています。

植周造園創業百年記念誌「造園芸術」

概要と発行情報

前述の日本造園学会の機関誌とは全く異なる出版物として、「造園芸術: 植周創業百年記念誌」という名称の書籍が存在します。こちらは、日本の造園業界において長い歴史を持つ企業である植周造園株式会社が、同社の創業100周年という大きな節目を記念して企画・制作し、発行した記念誌です。記念誌は、通常、企業の沿革や事業内容、あるいは特定のテーマに関する考察などをまとめた単行本形式の出版物であり、定期刊行物ではありません。この植周造園創業百年記念誌は、1977年に発行されました。これは、日本造園学会の機関誌の刊行が終了した1931年から40年以上が経過しており、名称が偶然一致したものであると考えられます。したがって、「造園芸術」という名称が用いられた場合、それが日本造園学会の機関誌を指すのか、植周造園の記念誌を指すのかは、文脈によって明確に判断する必要があります。

まとめ

「造園芸術」という言葉は、昭和初期に日本造園学会が発行した学術的な機関誌と、昭和後期に植周造園株式会社が発行した企業の記念誌という、同名の異なる二つの出版物を指しうるため、その使用にあたっては、どの出版物について言及しているのかを明確にすることが重要です。

関連項目

造園雑誌
芸術

参考文献

* 職業能力開発総合大学校 能力開発研究センター編 『造園概論とその手法』

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