進研模試

進研模試とは

進研模試は、ベネッセコーポレーションが大学進学を目指す高校生向けに提供する、広範に利用されている民間模擬試験です。これは同社の登録商標であり、過去には駿台予備学校との連携による「駿台・ベネッセ模試」も展開されています。この模試の最大の特徴は、その受験者数の多さと、それによって形成される安定した母集団にあります。この安定した母集団から得られるデータは高い信頼性を持つと評価されています。

通常、この模試の受験申し込みは個人ではなく、学校単位での団体受験が原則となっています。なお、首都圏を中心に活動する進学研究会が実施する「Vもぎ」と名称が似ているため混同されることがありますが、運営主体を含め全く別の模擬試験です。

特徴と評価

進研模試は、同じベネッセが提供する学力診断テスト「スタディーサポート」と比較すると、出題範囲が限定的である一方で、難易度の幅が広いと指摘されています。この特性により、受験者の偏差値はより分散する傾向にあると見られています。

模試の結果として収集された受験生の学力データは、ベネッセによって分析・加工され、個々の受験生にフィードバックされます。特に、大学の合格可能性判定は受験生の成績に基づいて段階的に示されます。かつては合格可能性がA（80%以上）、B（60%以上）、C（40%以上）、D（40%未満）の4段階で判定されていましたが、後に合格可能性が20%を下回る場合にE判定が加わり、現在のような形になりました。

幅広い利用状況

進研模試は全国の非常に多くの高等学校で導入されており、その数は3000校にも上ります。年間で約40万人の高校生がこの模試を受験しています。2012年度の高校3年生対象の総合学力マーク模試・6月においては、その受験者数が約44万人に迫り、これは当時の大学入試センター試験の受験者数（約54万人）の約8割に相当する高い割合でした。この圧倒的な受験者数と高い網羅率は、進研模試が日本の高校生の進路選択に大きな影響力を持つことを示しており、安定した母集団から信頼性の高いデータが提供されている根拠となっています。

この模試で提示される大学の偏差値データは、大学側が入学者選抜の参考に利用するケースも見られます。また、研究分野においても活用例があり、例えば国立情報学研究所が主導した人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」では、人工知能の読解力評価のために2016年の進研模試・総合学力マーク模試（6月）が用いられました。

模試を巡る課題：不正行為

進研模試は、実施時期がある程度定められているものの、全国の学校で試験日が統一されているわけではありません。この実施日のばらつきを悪用し、先に試験を受けた学校の生徒がインターネット掲示板などに問題や解答を投稿し、後日受験する他の学校の生徒が事前にそれを知る、いわゆる「ネタバレ」行為が2005年頃から問題視されるようになりました。その後、この不正行為はTwitterなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス（SNS）やインターネットオークションサービスへと拡大し、電子マネーなどを介した問題・解答の不正な売買も確認されるようになりました。

これに対し、ベネッセ側は以前から不正取引の削除を要請していましたが、2018年からはメルカリ、ヤフー（ヤフオク!）、楽天グループ（ラクマ）といったプラットフォーム事業者と連携し、不正な出品の削除強化に乗り出しました。しかし、SNS上での情報拡散については、各SNS運営会社の判断に委ねられる部分が大きく、完全な対策は難しい状況が続いています。

不正行為の背景には、特定の学校が内部進学の合否判定やクラス分けの基準として進研模試の成績を用いる場合や、予備校が特待生選考の基準とすることがあるため、これらの場合に「ネタバレ」が直接的なメリットにつながる可能性が考えられます。しかし、一般的に、大学への外部進学を目指す場合において、進研模試の成績が高校の内申点や大学推薦に影響することはなく、不正によって自身の学力が実際に向上するわけではないため、「ネタバレ」によるメリットは存在しないとされています。むしろ、模試での不正行為にはいくつかの深刻なデメリットが伴います。

弁護士の見解によれば、不正行為は以下のような法的なリスクを招く可能性があります。

模試の実施というベネッセの業務を妨害する行為であり、また主催者を欺いて受験していると判断される場合、偽計業務妨害罪が成立する可能性があります。
不正によって予備校の授業料免除などの金銭的な利益を得た場合は、詐欺罪が成立する可能性も指摘されています。

一方で、内部進学やクラス分けといった、財産上の利益と直接的に結びつきにくい形態の恩恵に対しては、詐欺罪の成立は難しいとされています。しかし、仮に不正が発覚すれば、受験生は信用を失墜し、所属する場所での地位を失う可能性が極めて高いです。さらに、不正によって一時的に実力以上の評価を得たとしても、実際の学力が伴わないまま上の段階に進んでしまうと、その後の学習や進路において大きな苦労を強いられることになります。

制作体制

進研模試の問題は、変化する社会情勢や改訂される学習指導要領の内容を綿密に踏まえ、日本全国の教科専門家や高等学校の教員との連携のもとに制作されています。

本模試に関連する情報として、ベネッセが提供する通信教育講座である「進研ゼミ」が挙げられます。

（※この記事は公開情報に基づいて作成されています。最新の情報は公式サイト等をご確認ください。）

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