運動知覚

運動知覚

運動知覚とは、様々な刺激から運動を読み取る知覚のことです。私たちは、周囲の環境や自己の体の動きを常に把握するために、この運動知覚を利用しています。

概要

現実世界では、物体は常に連続的に運動しています。運動知覚は、この物体の位置変化を知覚する能力です。運動の主体は、小石のような物体から、自己自身、あるいは原因不明な何かまで様々です。例えば、目眩を感じた時の回転感も運動知覚の一種です。

自己の運動を知覚する場合は、特に自己運動知覚と呼ばれます。

運動を知覚する手がかりも様々です。例えば、自分に向かって投げられたボールの運動は、ボールの反射光、風を切る音、手で受け止めたときの感触など、様々な情報から総合的に判断されます。これらの情報に基づいて、脳はボールの運動を推測します。動物は進化の過程でこのような能力を獲得し、視覚、前庭覚、触覚など、様々な感覚を通じて運動を知覚するようになりました。特に、視覚刺激に基づく運動知覚は運動視と呼ばれます。

運動錯覚

運動知覚は、刺激から運動を読み取るプロセスですが、必ずしも刺激が常に実際の運動に対応しているとは限りません。刺激を誤って解釈し、実際には存在しない運動を知覚してしまうことがあります。これは運動錯覚と呼ばれ、錯覚によって生み出された存在しない運動は仮現運動と呼ばれます。これに対し、物理的に存在する運動は実際運動と呼ばれます。

脳科学

脳科学的な研究により、MT野やMST野といった脳領域が運動知覚に重要な役割を果たしていることが明らかになっています。これらの領域に電気的な刺激を与えることで、強制的に運動錯覚を引き起こすことも可能です。

自己運動知覚の詳細

自己運動知覚は、自己の運動を読み取る知覚であり、姿勢制御に不可欠です。自己運動知覚が損なわれると、直立が困難になるなど、深刻な運動障害を引き起こす可能性があります。また、車に乗っている時に感じるような受動的な運動も、自己運動知覚によって認識されます。そのため、自己運動知覚は、能動的な運動を検出するものと、受動的な移動を検出するものに分けられます。

参考文献

久方, 瑠美 (2020). "特集：視覚心理物理学の最近の動向　運動知覚の基礎とその動向". 視覚の科学. 41 (4): 66–69.

関連項目

知覚
錯覚
運動錯覚

もう一度検索