遠山正道

遠山正道氏は、多角的な事業を展開する株式会社スマイルズを率いる日本の実業家です。飲食分野では「スープストックトーキョー」や「トーキョールー」、ファッションではネクタイブランド「giraffe」、そしてユニークなコンセプトのリサイクルショップ「PASS THE BATON」など、いずれも既存の枠にとらわれない独自の視点から生まれたブランドを世に送り出しています。

1962年、日興證券の元会長を祖父に、中央信託銀行会長の娘を母に持つ家庭に東京都港区で生まれ育ちました。幼い頃から慶應義塾の付属校に進み、一貫して同窓で学びます。しかし、11歳の時に父親を不慮の事故で亡くすという経験をしています。1985年に慶應義塾大学商学部を卒業しました。

大学卒業後、大手総合商社である三菱商事に入社。建設部門で大規模開発に携わった後、情報化推進やITソリューションの分野で経験を積みました。しかし、次第に消費者に近いビジネス、特に小売業への関心を強め、1997年には日本ケンタッキーフライドチキンへ出向します。

小売りの現場で経験を積む中で、スープを主役にした専門店というアイデアを温めます。そして1999年、東京・お台場の商業施設に「スープストックトーキョー」の第一号店をオープンさせました。その翌年、2000年には三菱商事内で初めての社内ベンチャーとして株式会社スマイルズを設立し、代表取締役社長に就任。異例の独立に際し、かつて実業家の牛尾治朗氏から「あなたは人が良いから、経営者に向いている」と言われた言葉が後押しになったといいます。

スマイルズは「スープストックトーキョー」を中心に成長を続け、その後も個性的な事業を展開していきます。社長を務めた後、2005年には会長に就任しますが、2008年にMBO（経営陣による買収）を実施し、再び代表取締役社長として指揮を執ることとなりました。

実業家としての顔だけでなく、遠山氏は長年アート活動にも情熱を傾けています。学生時代から絵を描き続け、商社勤務時代には松任谷由実のコンサートのステージ絵に参加したほか、国内やニューヨークで個展も開催しています。かつては年間70枚もの絵を描いていた時期もあったといいます。また、近年は多摩美術大学や女子美術大学で教鞭を執るなど、教育分野でも活動しています。

2020年には、経済的な自立と幸福の新しい形を模索するサブスクリプション型コミュニティ「新種のimmigrations」を立ち上げました。このコミュニティ活動から派生し、2023年には自身がポエトリーリーディングを担当するバンド「新種のImmigrationsB」を結成。独自の音楽制作と配信活動を行っています。

遠山氏は自身の経験や考え方を綴った著作も多数発表しており、ベストセラーとなった書籍もあります。テレビ番組「カンブリア宮殿」などメディアにも登場し、そのユニークな経営哲学や生き方が紹介されています。

もう一度検索