遠洋性堆積物

遠洋性堆積物

定義と特徴

陸から遠く離れた外洋の深海底に形成される堆積物で、ペラガイトとも呼ばれます。陸地からの供給が少ない海域で、海水中の微細な粒子が沈降・蓄積してできます。主な構成要素は、プランクトンの微小な殻や骨格、陸地から風や海流で運ばれた粘土サイズの鉱物粒子です。微量の隕石塵や火山灰も含まれます。

形成に影響する要因

遠洋性堆積物の種類、分布、組成は、主に以下の3つの要因で決まります。

陸地からの距離: 陸地に近いほど陸源物質の影響が大きくなります。
水深: 生物起源粒子の溶解に影響し、堆積する種類を左右します。
* 海の生産性: プランクトンの発生量が生物起源粒子の供給量を制御します。

地球環境史の記録として

遠洋性堆積物は地球表面の約6割を覆う広大な範囲に分布しています。深海底は環境変動の影響を受けにくく、堆積が比較的連続して行われるため、過去の地球規模の環境変化に関する記録が詳細かつ連続的に保存されています。海水温、海水面変動、気候変動、プレート運動などの解明に不可欠な情報源として重要視されています。

分類

遠洋性堆積物は、その組成、特に生物起源成分の種類と量に基づいて、主に「軟泥」と「遠洋性粘土（赤色粘土）」に大別されます。

軟泥 (Oozes)

軟泥は、微小なプランクトンなどの生物遺骸が全体の30%以上を占める、泥状で柔らかい遠洋性堆積物を指します。残りの大部分は粘土鉱物です。構成粒子は、プランクトンの殻に由来するシルトから砂程度の大きさの粒子と、粘土サイズの珪砕粒子に分けられます。軟泥は含まれる主要な生物の種類（例：珪藻、有孔虫、放散虫など）や、構成する鉱物の種類（石灰質か珪質か）によってさらに細かく分類されます。軟泥の堆積速度は非常に遅く、1000年あたり数センチメートルにも満たないのが一般的です。

石灰質軟泥 (Calcareous Ooze)

石灰質軟泥は、有孔虫や円石藻、翼足類といった生物の石灰質（炭酸カルシウム製）の微小な殻が、堆積物全体の30%以上を占める軟泥です。これは遠洋性堆積物の中で最も広く分布しており、世界の海底面積の約48%を占めています。石灰質軟泥は、炭酸カルシウムが深海で溶解しやすくなる特定の水深（炭酸塩補償深度; CCD）より浅い海域の海底に主に堆積します。他のタイプの遠洋性堆積物と比較すると、比較的速い速度で堆積し、その速度は1000年あたり0.3センチメートルから5センチメートル程度です。

珪質軟泥 (Siliceous Ooze)

珪質軟泥は、珪藻や放散虫などの生物の珪質（二酸化ケイ素製）の微小な殻が、堆積物全体の30%以上を占める軟泥です。海綿骨片なども含むことがあります。珪質軟泥はCCDより深い海域でも堆積可能ですが、極海や赤道直下の湧昇帯など生物生産性の高い特定の限られた海域（海底面積の約15%）に分布します。堆積速度は石灰質軟泥より遅く、1000年あたり0.2センチメートルから1センチメートル程度です。

遠洋性粘土 (Pelagic Clay) または 赤色粘土 (Red Clay)

遠洋性粘土は、赤色粘土や褐色粘土とも呼ばれ、海洋で最も深く、陸地から最も離れた海域に堆積するタイプの遠洋性堆積物です。この堆積物は生物起源の成分が30%未満であり、その大半が生物以外の由来を持つ粒子で構成されています。具体的には、風によって運ばれた粘土鉱物や石英（風成塵）、火山灰、そして生物起源粒子が沈降中に溶解した後に残った微量成分などが含まれます。また、海底で形成される自生鉱物も含まれます。生物生産性が低く、かつCCDより深い、軟泥が堆積しない海域（海底面積の約38%）に広く分布します。遠洋性粘土の堆積速度は、遠洋性堆積物の中で最も遅く、1000年あたりわずか0.1センチメートルから0.5センチメートル程度です。

赤色粘土の主成分である微細な粘土粒子は、風や海流で長距離運ばれ、沈降には100年以上かかることもあります。沈降は粒子の凝集や生物による糞粒への取り込みで促進されます。

堆積物中に含まれる鉄やマンガンの酸化物の影響により、遠洋性粘土は明るい赤色からチョコレートブラウンの色を呈します。有機物が少ないため酸化状態が保たれ、堆積後も褐色を維持します。深く埋没が進むと、水酸化鉄がヘマタイトに変化し、より濃い赤色になることがあります。

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