遠照寺

遠照寺（おんしょうじ）

長野県伊那市高遠町に位置する遠照寺は、妙朝山を山号とする日蓮宗の寺院です。特に牡丹寺として有名で、四季折々の美しい花々が訪れる人々を魅了します。寺内には、歴史的価値の高い釈迦堂と多宝小塔があり、これらは国の重要文化財に指定されています。

歴史

遠照寺の創建は、寺伝によると弘仁11年（820年）に最澄が東国教化の際にこの地を訪れ、薬師堂を建立したことに始まります。この薬師堂が遠照寺の前身とされています。その後、天台宗寺院として発展し、天福元年（1233年）には谷室山天福寺が開かれました。しかし、文正6年（1471年）に火災により伽藍が焼失。文明5年（1473年）、身延山11世行学院日朝上人がこの地に駐錫し、住僧を日蓮宗に改宗させ、日用と名を賜り遠照寺の初代住職となりました。これにより、遠照寺は日蓮宗の寺院として再興されました。

2019年7月には、日蓮宗宗門史跡調査により釈迦堂が「宗門最古の法華堂」と認定され、境内全域が「宗門史跡」の指定を受けました。釈迦堂の建立年代は、当初天文7年（1538年）とされていましたが、その後の調査により文明6年（1474年）から明応4年（1495年）の間であることが判明しました。これは、堂内の多宝塔が文亀2年（1502年）に建立されたことや、新たな墨書が発見されたことなどが根拠となっています。

近年では、牡丹の名所として知られ、180種類2000株の牡丹が咲き誇る5月中旬から6月初旬には多くの参拝者で賑わいます。2020年には、薬師堂建立から1200年を迎え、「いのちに合掌」というテーマに加え、「美しい山里の寺づくり」を新たな目標に掲げ、境内整備や地域との連携を深めています。

文化財

重要文化財

釈迦堂（附 多宝小塔）：
釈迦堂は方三間、一重、入母屋造、向拝一間付き、銅板葺で西面しています。2020年には日蓮宗最古の法華堂と認定されました。建立年代は文明6年（1474年）から明応4年（1495年）の間で、宗門史跡調査委員会の調査により、天文7年（1538年）建立説は改められました。釈迦堂はかつて本堂として使用されていましたが、後に本堂が別に建立され、東端の仏堂となっています。

多宝小塔は、三間多宝塔、瓦棒入板葺で、内部の心柱には建立に関する墨書が残っています。墨書によると、文亀2年（1502年）に建立されたことがわかります。長野県最古の多宝塔とされ、その精緻な造りは見る者を魅了します。

市指定有形文化財

七面堂：
永正3年(1506)に厨子が建立され、建物は享保年間等数回の修復を経て現在に至っています。内部には江戸時代の美しい総絵天井が残されています。
鰐口・陣太鼓：
織田軍が高遠城を攻略した際に残されたものと伝えられています。鰐口には文明十五年（1483年）の銘があり、陣太鼓は坂上田村麻呂が蝦夷征伐の戦勝を感謝して諏訪神宮寺に奉納したとされる太鼓と伝えられています。

市指定名勝

庭園：
「鶴亀合掌（いのり）の庭」と名付けられた庭園は、遠州流の様式で、江戸時代初期に造られたと推定されています。亀島を中心に巧みに石が組まれ、県内でも特に美しい亀島として知られています。1990年には、京都南禅寺金地院の小堀遠州作の庭園を参考に、鶴石組や玉礀式の滝石組が整備されました。

日蓮宗宗宝

七面天女尊像、多宝塔附四天王像、朝師堂御前机、七面堂経机、日朝・日意・日伝 三幅対曼荼羅本尊、日朝曼荼羅本尊、日脱曼荼羅本尊、日省曼荼羅本尊、日亨曼荼羅本尊、日裕一遍首題、日現一遍首題、日耀曼荼羅本尊、日潮書など、多数の貴重な宝物が所蔵されています。

伽藍

遠照寺には、山門、鐘楼堂、本堂、釈迦堂、朝師堂、七面堂、庫裏、土蔵などの伽藍が配置されています。それぞれの建物が歴史と風格を醸し出し、参拝者を静かに迎えます。

遠照寺は、その歴史、文化財、美しい自然を通して、訪れる人々に安らぎと感動を与え続けています。

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