遠藤武 (生活文化史学者)

遠藤 武（えんどう たけし）

遠藤武氏は、1911年（明治44年）12月16日に東京市で生まれ、1992年（平成4年）12月10日に80歳でその生涯を終えた、日本の著名な学者です。彼の専門は、近世日本の服飾および生活文化史であり、この分野の研究において重要な足跡を残しました。

経歴と学究活動

遠藤氏の学究生活は、1935年（昭和10年）に立教大学文学部史学科を卒業したことから始まります。

卒業後、彼は多岐にわたる機関でその能力を発揮しました。初期には、帝室博物館の研究員として、また日本実業史博物館の主事として、博物館という場で歴史資料と向き合いました。その後、文部省学術課史料館にて文部事務官として勤務する傍ら、和洋女子大学で教授を務めるなど、教育分野にも足を踏み入れました。

特に文化女子大学では、主任教授として、また文化学園博物館の館長として、長年にわたり後進の指導と研究機関の運営に尽力しました。その功績により、文化女子大学名誉教授の称号が贈られています。

また、文化女子大学以外にも、福島大学、大妻女子大学、静岡女子大学、関東学院女子短期大学、郡山女子短期大学、湘北短期大学といった多くの教育機関で講師を歴任し、幅広い場でその知識を共有しました。

研究者としては、1961年に国学院大学から文学博士の学位を取得しています。彼の学位論文のテーマは「服飾上よりみたる近世女性風俗」であり、このことからも、彼の研究が日本の服飾史、特に女性の風俗に深く根差していたことがうかがえます。

学会活動と社会貢献

遠藤武氏は、研究・教育活動に加え、様々な学会や文化関連組織の要職を歴任し、その分野の発展に大きく貢献しました。

日本服飾学会では会長を務め、この分野の研究振興に尽力しました。また、日本風俗史学会東京副支部長としても活動。さらに、文化財保護審議会の専門委員として、日本の貴重な文化財の保護にも関与しました。神奈川大学日本常民文化研究所の理事や、江戸東京博物館の資料収集委員も務めるなど、日本の生活文化や歴史に関する資料の保存・活用にも貢献しました。

主な著作

遠藤氏の研究成果は、数多くの著作として結実しています。服飾史から生活文化、広告史に至るまで、その関心は多岐にわたりました。

単著

• - 『座机と書棚（木材工芸叢書16）』洪洋社
• - 『室内家具装飾法』産業図書
• - 『図説広告変遷史』中部日本新聞社
• - 『日本の民具』慶友社
• - 『図説日本服飾史』建帛社
• - 『服飾近代史』雄山閣出版
• - 『原色浮世絵大百科事典 第五巻 風俗』大修館書店
• - 『近代日本服飾史』
• - 『図説日本広告史』

特に、彼の研究を集大成した『遠藤武著作集』が三巻にわたって文化出版局から刊行されており、服飾編、近代編、民俗編として彼の幅広い業績を知る上で貴重な資料となっています。また、代表作の一つである『日本の民具』は、新装版も出版され、多くの読者に読まれ続けています。

共著

他の研究者との共同研究による著作も複数あります。

• - 『講座日本風俗誌 第1巻』（松島栄一・池田弥三郎と共著）文化出版局
• - 『図説日本洋装百年史』（原田伴彦・百瀬明治と共著）文化出版局
• - 『写真にみる日本洋装史』（石山彰と共著）文化出版局
• - 『図録 近世女性生活史入門事典』（原田伴彦・百瀬明治と共著）柏書房
• - 『絵で見る江戸の女たち』（原田伴彦・百瀬明治と共著）柏書房

これらの著作は、日本の服飾史や生活文化史、風俗史研究における基礎文献として、現在も多くの研究者や学生に参照されています。

遠藤武氏は、教育者、研究者、そして文化財保護に尽力した人物として、近世日本の服飾と生活文化史研究の発展に多大な貢献をしました。

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