遷界令

遷界令（せんかいれい）：清朝による沿岸住民強制移住政策

遷界令は、1661年に清朝が発令した住民強制移住政策です。この政策は、明朝復興を目指す鄭成功の勢力を弱体化させることを目的としていました。

背景

1644年に北京を占領した清朝は、1659年には中国のほぼ全域を支配下に置きました。しかし、福建省沿岸部では、鄭成功が依然として勢力を保ち、日本との貿易を通じて得た資金を軍備に費やし、清朝に対抗していました。

遷界令の内容

清朝は鄭成功の勢力を削ぐため、1661年に遷界令を発令しました。これにより、広東省から山東省にかけての沿岸部から30里（約15km）以内の住民は、内陸部への強制移住を命じられました。沿岸部は無人地帯とされ、鄭成功の物資補給を遮断する狙いがありました。

この政策は、福建省沿岸地域の村落調査に基づいて実施されたと考えられています。住民への影響は甚大でしたが、清朝側の意図通り、鄭成功は海上での孤立を余儀なくされ、台湾を新たな拠点とすることになりました。

影響

遷界令は、沿岸部の住民に大きな苦しみを与えました。住み慣れた土地を離れ、生活基盤を失う人々が続出しました。しかし、清朝にとっては、鄭成功の勢力を弱める上で一定の効果があったとされています。鄭成功は台湾に拠点を移し、鄭氏政権を樹立することになります。

中国本土から日本への中国人の渡航は、鄭氏政権が1683年に滅亡した後、翌1684年に許可されました。

遷界令に関連する歴史事項

鄭氏政権 (台湾): 鄭成功が台湾に築いた政権。遷界令により中国本土から孤立した鄭成功が、台湾を拠点として清朝に対抗しました。
鄭成功: 明朝復興を目指し、清朝に対抗した英雄。遷界令により海上封鎖され、台湾に拠点を移しました。
南明: 清朝に滅ぼされた明朝の残存勢力。鄭成功も南明を奉じていました。
海禁: 清朝が実施した貿易制限政策。遷界令も海禁政策の一環として捉えられます。
倭寇: 中世から近世にかけて東アジア沿岸部で活動した海賊。
台湾: 鄭成功が拠点を築いた島。後に清朝に編入されます。
鎖国: 江戸時代の日本が採用した貿易制限政策。清朝の海禁政策と類似点があります。
戦略村: 特定の勢力を封じ込めるために作られた村。遷界令による移住政策は、戦略村の概念と共通する部分があります。

遷界令は、清朝の支配確立と鄭成功勢力の弱体化という二つの目的を達成するために行われた、大規模な強制移住政策でした。この政策は、沿岸住民に多大な犠牲を強いる一方で、東アジアの歴史に大きな影響を与えました。

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