選挙制度審議会

選挙制度審議会（せんきょせいどしんぎかい）

内閣府に設置されている審議会等の一つで、選挙制度審議会設置法に基づいて設けられた機関です。1961年に初めて設置されて以降、これまでに8回にわたって組織されました。

役割

選挙制度審議会は、主に以下の重要事項について、内閣総理大臣の諮問を受けて調査し、議論を行います。また、自らの判断で調査・審議を進め、内閣総理大臣に意見を具申することも可能です。

• - 公の選挙や投票の制度に関する重要な事柄
• - 国会議員の選挙区や、各選挙区で選出される議員の数を定める基準、および具体的な区割り案の作成に関する事柄（ただし、1994年以降は衆議院議員選挙区画定審議会の担当するものを除きます）
• - 政党やその他の政治団体、政治資金の制度に関する重要な事柄
• - 選挙の公明化を推進するための活動に関する重要な事柄

組織構成

この審議会は、27名以内の委員で構成されます。必要に応じて、特定の事項を調査・審議するために特別委員を置くことができます。委員は、学識経験を持つ方々の中から内閣総理大臣によって任命されます。特別委員は、国会議員と学識経験者の両方の中から内閣総理大臣が任命します。ただし、国会議員の中から任命された特別委員は、衆議院議員の選挙区割りや議員数を定める具体的な案の作成に関する調査・審議に参加することはできません。

これまでの歩み

選挙制度審議会の前身は、総理府設置法に基づき設けられていた選挙制度調査会とされています。その後、単独の法律によって選挙制度審議会が新たに設置された背景には、内閣がより権威のある審議会を組織しようという意図があったと考えられています。

選挙制度審議会設置法には、内閣総理大臣からの諮問を受けて調査・審議する役割に加え、独自の判断で調査・審議を行い意見を申し出ることができる点、そして政府はその答申や意見を尊重しなければならない、という重要な特徴が定められていました。しかし、政府の答申尊重義務を定めた第3条は、1999年の中央省庁等改革関連法の整備に伴う法改正により削除されています。

衆議院は、選挙制度審議会設置法の審議に際し、「当面急を要する事項を速やかに処理すること」「選挙区制の根本改正については特に慎重に進めること」「現行選挙区制における衆議院議員の選挙区別人口と議員定数の著しい不均衡を早急に是正すること」など、四項目の附帯決議を可決しています。

各次の審議会

これまでに設置された8回の審議会は、それぞれ特定の課題に取り組んできました。

第1次（1961年6月〜1962年6月）：選挙の公明化方策が諮問され、答申が行われました。しかし、内閣が答申内容の一部（政治資金規制、公務員の立候補規制、連座制など）を修正して法案提出したことに対し、審議会内では「政府は答申を無視している」との声が上がり、一部委員が抗議の意思表示を行う事態となりました。また、衆議院の附帯決議にもかかわらず、定数是正に関する議論は方向性を巡って停滞し、任期中に答申には至りませんでした。
第2次（1962年11月〜1963年11月）：定数是正が主要な議題となり、選挙区制度と定数に関する委員会が分離されました。1963年に答申が行われましたが、定数是正は不均衡が特に大きい選挙区に限られる不十分な内容であり、中選挙区制の原則である「3人～5人区」を外れる8人区や6人区、2人区を新たに設けるものでした。政府はこの答申に基づき法案化を進めましたが、衆議院の解散により一度頓挫。その後提出された法案は国会で修正され、1964年に定数是正が実現しました。
第3次〜第5次（1964年8月〜1967年11月）：3度にわたり引き継がれ、選挙区制度の根本的改善が諮問されました。小選挙区制、小選挙区比例代表制、中選挙区制2名連記などが議論されましたが、政治状況（特に小選挙区制への野党や東京都議会の強い反対、佐藤首相の慎重姿勢）の影響もあり、選挙区制に関する具体的な答申には至りませんでした。第5次では政治資金や連座制強化に関する答申は行われましたが、選挙区制に関しては最終的に取りまとめた案すべてが否決されました。
第6次（1969年5月〜1970年5月）：衆議院の選挙区問題には触れず、参議院議員選挙を中心に議論が行われました。参議院の地方区における定数増減案を答申しましたが、この案が実際に反映され、参議院地方区の定数是正が行われたのは、答申から四半世紀近く後の1994年でした。
第7次（1970年12月〜1972年12月）：政党本位の選挙を実現するための根本的改善策が諮問されました。任期が法改正で2年に延長され、再び選挙区制が大きな論点となりましたが、結局答申は行われず、報告書の提出をもって終了しました。この報告を受けて、当時の田中角栄内閣総理大臣が選挙区割りの改正案提出を試み、「カクマンダー」と批判されることになります。国会では「7次審（ななじしん、しちじしん）」とも呼ばれました。
第8次（1989年6月〜1991年6月）：竹下、宇野、海部内閣と引き継がれ、選挙制度および政治資金制度の根本改革が諮問内容でした。第一次答申では、衆議院の中選挙区制廃止と小選挙区比例代表並立制の導入、政治資金規制の強化を提言。第二次答申では、参議院への非拘束名簿式導入や政党助成の導入について具体的な内容を示しました。また、衆議院の区割りに関する諮問にも答申を行っています。国会では「8次審（はちじしん）」とも呼ばれ、その次が設置されれば「9次審（くじしん）」となります。

第8次の特徴的な点

第8次審議会は、それ以前の審議会とはいくつかの点で異なりました。一つは、特別委員として国会議員が任命されなかったことです。もう一つは、審議の速記録が今日に至るまで公開されていない点です。当時もこの非公開は問題視され、国会で追及されましたが、政府は「委員間の自由活発な意見交換のため、非公開とする申し合わせがあった」として、公開を拒否しました。

選挙制度審議会は、その設置以来、日本の選挙制度や政治資金制度のあり方について議論を重ね、国の政治システムに影響を与えてきた重要な機関と言えます。

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