邪悪の家

邪悪の家

『邪悪の家』は、イギリスの著名な小説家アガサ・クリスティが1932年に発表した長編推理小説です。本作は、クリスティの長編作品の中で12番目にあたり、エルキュール・ポアロシリーズの第6作目に位置付けられています。物語は、ポアロとその友人ヘイスティングスがコーンウォールのリゾート地で過ごしている際に始まります。

あらすじ

物語の中心人物である若い女性、マグダラ（通称ニック）・バックリーは、何者かが自分を狙っているとポアロに訴えます。彼女は、顔の周りにハチが飛んでいるのを見たと語りますが、ポアロはその後、エンド・ハウスで弾丸を発見し、彼女の身に危険が迫っていることを確信します。ニックの近親者である弁護士チャールズ・ヴァイスや、メイドのエレン、そして近隣に住むオーストラリア人のクロフト夫妻らが登場し、ポアロは誰がニックの命を狙っているのかを探ることになります。

作中でニックの親友であるフレデリカや彼女に恋い焦がれる美術商のジム・ラザラスも絡んできて、物語は徐々に複雑化していきます。ニックは、親しい友人の助けを得るために従妹のマギーを呼ぶことを決め、数週間一緒に過ごすことにします。しかし、パーティーの席ではニックのショールを身に着けたマギーが死体で発見されるという衝撃的な展開が待ち受けています。

ポアロは、この事件が自分の目の前で起きたことに苛立ち、捜査を開始します。ニックの身を守るため、彼女を入院させ、不審な食べ物を口にしないように指示します。その後、ニックは自分が飛行家マイケル・シートンと秘密裏に婚約していたことを告白します。シートンの死が報じられ、ポアロは彼が持つ財産を狙う者がいると考え、捜査を続けます。

しかし、ポアロの見立てが正しいかどうかは不明であり、疑念は深まります。ポアロは数々のトリックを用いて事件の真相に迫り、ニックの遺言書の行方を追います。そして、ニックが予定していた財産を巡る疑惑が次々と浮かび上がる中、ポアロは驚愕の真相に辿り着くことになります。

物語のクライマックスでは、ニックが実は事件の黒幕であることが明らかになります。彼女はシートンの婚約者になりすまし、多額の遺産を奪おうとしていたのです。ニックは自らの命を狙ったのも、その計画の一環だったという衝撃の事実がポアロによって暴かれます。結局、彼女は逮捕され、コカインの取引に関与していたことも発覚しますが、彼女の真の動機はもともと自分の利益にあったのです。

評価と影響

『邪悪の家』は1950年代に日本でも翻訳され、後に映画やテレビドラマ、アニメなど多くの翻案が作られました。特にクリスティの作品は、その緻密な構成とユーモアを兼ね備えた人物描写が高く評価され、多くの読者に親しまれています。クリスティ作品全般の中でも『邪悪の家』は代表作としても知られており、彼女の作品が持つ独自の魅力を感じることができる名作です。

もう一度検索