邪神の天秤 警視庁公安分析班

邪神の天秤 警視庁公安分析班

『邪神の天秤 警視庁公安分析班』は、麻見和史によって書かれた推理小説であり、警視庁公安分析班シリーズの初めての作品です。この小説は、2021年3月5日に講談社ノベルスとして出版され、同年12月には文庫版も刊行されました。

物語は、警視庁捜査一課の鷹野秀昭が公安部に異動し、新たな環境に戸惑いながらも、彼の過去と向き合いながら事件解決に挑む様子を描いています。特に彼は、9年前に相棒の沢木政弘が殉職した事件の真相を追うことで、自身の成長と葛藤を重ねて行きます。

この小説には、書籍の巻末に観られるように、テレビドラマ化されることを前提にした制作背景があります。麻見氏はWOWOWの制作チームとの打ち合わせを経てこの物語を書くことになり、特にドラマにおける映像表現を意識した構成になっています。後に、シリーズの第2作『偽神の審判 警視庁公安分析班』とともに、2022年にはドラマとしても放送されました。

あらすじ

物語は、9年前にさかのぼります。警視庁捜査一課の鷹野秀昭は、後輩であり相棒の沢木政弘を鍛える一環として、挙動不審な男に職務質問を行わせます。しかし、鷹野がその場を離れている間に、沢木は刺されて命を落としてしまいます。この事件は以来、捜査も難航し迷宮入りとなります。沢木の姉である美香から責められる鷹野は、その後の自身のキャリアを見つめ直し、公安部への異動を希望します。

運命の春、鷹野は公安部に配属され、異動からわずか5日後、赤坂で発生した爆破テロに遭遇。混乱の中で、政治家の真藤健吾が殺害され、その遺体の横には天秤が置かれていました。天秤の片方には鳥の羽、もう片方には心臓が乗っており、さらにはヒエログリフが刻まれた板があったことが、この事件の不気味さを加速させます。鷹野は捜査を開始しますが、警視庁刑事部との捜査スタイルの違いから、最初の試みで失態を犯してしまい、班長の佐久間から厳しい言葉を受けます。

鷹野は、公安部内で自分なりの捜査手法を模索するものの、赤坂事件が未解決のまま、中野で再び教授が天秤を伴う形で殺害される第2の事件が発生。事件の背後には、殺し屋「鑑定士」の影がちらつき、事件は次第に深刻さを増していきます。
このように、鷹野の成長物語と厄介な事件が交錯する中、物語が進んでいくのです。

登場人物

• - 鷹野秀昭（37歳）: 事件の真相を追う元捜査官。事件のために様々な手法を試みる。
• - 氷室沙也香（39歳）: 鷹野の同僚で、冷静沈着で優れた観察力を持つ。
• - 佐久間一弘: 鷹野の班長。厳しいながらも部下に信頼されている。
• - 能見義則（43歳）: 部隊内で気が短いが、時折、鷹野に助言をする。
• - 国枝周造: 家庭的な雰囲気のある熟練の巡査長で、監視システムに詳しい。
• - 溝口晴人（32歳）: 探査の若手メンバー。情報収集に活躍。

物語の中で彼らが直面する数々の事件を通じて、公安という厳しい環境の中での人間関係や感情の葛藤が巧みに描かれています。『邪神の天秤』は、単なる警察小説に留まらず、人間ドラマとしても読みごたえのある作品となっています。

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