郡区 (アメリカ合衆国)

アメリカ合衆国の郡区：多様な役割と州ごとの差異

アメリカ合衆国において、郡区（タウンシップ）は郡の下位に位置する地方自治体の単位です。しかし、その役割や自治の範囲は州によって大きく異なり、単純に一括りにすることはできません。本稿では、郡区の多様な側面を、州ごとの違いに焦点を当てながら解説します。

郡区の定義と機能

郡区は、一般的に郡議会の下部組織として位置付けられ、地域住民へのサービス提供を担っています。具体的な業務内容は州や地域によって異なり、道路管理、学校運営、高齢者福祉、緊急支援など多岐に渡ります。多くの郡区には、理事会や書記官などの職員がおり、地域運営にあたっています。近年では、行政官や執行官が理事会を統括するケースも増えています。

郡区には、独自の図書館、高齢者サービス、若者支援、障害者支援などを運営しているところもあります。また、共同墓地サービスを提供している郡区もあります。

州ごとの違い：多様な様相

郡区の性質は州によって大きく異なります。

中西部・西部諸州

西部諸州の多くでは、郡区は主に統計上の単位として機能し、実質的な自治権限は限られています。五大湖周辺地域では、測量に基づいたサーベイ・タウンシップが郡区として機能するケースが多く見られます。ミシガン州では「一般法郡区」と呼ばれ、自治機能は州や地域によってばらつきがあります。例えば、イリノイ州北部では積極的な公共サービスを提供する郡区が多い一方、南部では郡の意向によってサービスが縮小されているケースもあります。インディアナ州では、郡区評議員と理事会による運営が比較的統一され、自治機能も良好に機能している傾向にあります。

これらの州の郡区は、通常は法人化された自治体とはみなされず、近隣の都市による併合も比較的容易です。ミシガン州では、併合を防ぐために「チャーター・タウンシップ」という制度が設けられ、市と同等の自治権が与えられています。ウィスコンシン州では「町（town）」と呼ばれ、郡区とほぼ同義です。ミネソタ州では「○○郡区」という名称が義務付けられており、「町」と「郡区」は互換的に使用されます。また、オハイオ州では、一つの土地が市と郡区の両方に属することが認められています。

ペンシルベニア州とニュージャージー州

ペンシルベニア州の郡区は、市や区に属さない地域へのサービス提供を担っています。ニュージャージー州では、タウンシップは市と同等の地位を持つ通常自治体であり、他の州とは異なる位置付けとなっています。

北東部諸州

ニューイングランド地方とニューヨーク州では、「町（town）」という用語が郡区とほぼ同義で用いられます。ただし、ニューイングランド地方の「町」は、多くの場合、法人化済みの自治体です。合衆国国勢調査局はこれらの地方自治体を「郡区」と分類していますが、住民の認識は州によって異なります。これらの州の「町」は、開発の少ない地域に囲まれた小さな集落を中心とした構造を持つ点で、中西部の郡区と共通点があります。

南部諸州

南部諸州では、郡の下位自治体はほとんど存在しません。これは、これらの州が北西部条例以前に測量されたため、サーベイ・タウンシップが存在しないことが原因の一つです。ノースカロライナ州は例外で、郡区が依然として機能している地域があります。しかし、多くの場合、郡区は形式的な区分として扱われています。

まとめ

アメリカ合衆国の郡区は、州によってその定義、役割、自治権限が大きく異なる、複雑な行政単位です。それぞれの州の制度や歴史的背景を理解することで、初めて郡区の多様な姿を把握できるでしょう。この解説が、アメリカ合衆国の地方行政の理解に役立つことを願っています。

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